iPadでも快適にお絵描きできる? やっぱり液タブの方がいいの?
こんにちは、絵描きの京時ロメ(@kyotoki_OX)です。
かつてデジタルイラストといえば板タブか液タブのどちらかだったのですが、ここ数年でiPadという新たな勢力が台頭してきました。
iPad ProとApple Pencilの組み合わせが非常に優秀で、普段づかいするプロの方もいるほどです。
一方で、液タブでイラスト・マンガ制作する人も多いことに依然変わりありません。
そこで本記事では、液タブとiPadそれぞれの優れている点を解説し、それを踏まえて初心者にどちらがオススメなのかをお話しします。
液タブが優れている点
まずは液タブがiPadよりも優れている点を見ていきましょう。
画面が大きい&サイズが豊富
iPadはminiからProまで含めるとサイズは8.9~12.9インチの範囲から選ぶことになりますが、液タブなら11.6~31.5インチと幅広いサイズから選べます。
また基本的にiPadよりも画面が広く、ペイントソフトのパレットやツール類を表示するスペースを確保しやすい点が快適です。
また、キャンバスの拡大・縮小・移動といった操作が少なくて済むようになり、作業効率も上がります。
安い機種でも十分なスペック
2,3万円台からデジタルイラスト制作に十分な品質の液タブが入手できる点も魅力です。
解像度フルHD、アンチグレア加工、発色の良いIPSパネルのモニターが採用されていますし、反応速度や筆圧レベルなどの性能面も十分な水準を確保できています。
ではなぜそこまで安く販売できているのかと言うと、タブレットのように単体で動かない=単体で動かすためのパーツ代が浮くためだと考えられます。
液タブは描くことに特化したモバイルモニターのようなものです。1万円台から買えるフルHDのモバイルモニターに、お絵かきのための技術を盛り込んだと考えたら、2~3万円でも妥当と言えるでしょう。
ペンが必ず付属している
iPadだと別売りのペンを買う必要があり、第2世代Apple Pencilを買うなら追加で1~2万円近く支払うことになってしまいます。
液タブなら最初から専用のタッチペンが含まれているため予想外の出費に頭を抱えることはありません。
ペンが壊れたなどの理由で後から単品で購入するにしても、高級メーカーのワコムを除けば1万円以内でペンが購入できます。
替え芯についてもペンと同じく液タブに付属しているため、当分の間は買い足さなくても大丈夫です。
私は今の液タブを2年近く使っていて、未だに芯を一回も交換せずに済んでいます。毎日何時間も描いていたらもっと減りが早かったとは思いますが、それでもまだ余裕がありそうなくらいです
充電不要・軽量なペン
液タブのペンはUSB-C充電もワイヤレス充電もできません。
なぜなら充電そのものが不要だからです。
Bluetoothのペアリングを行ったり、ケーブルをつないだり、電池を交換したり……といった手間を全部すっ飛ばして、思う存分にペンを使い続けられます。
それも筆圧・傾き検知に対応した上で、です。
また、充電が不要ということはバッテリーを搭載する必要がないわけで、その分軽くなっている点も魅力と言えます。
2024年現在Apple Pencilが20.5~20.7gなのに対して、例えばWacom One スタンダードペンなら9.9g、Wacom Pro Pen3は9.1gとその差は明らかです。
比較的重い部類のを挙げても、文房具メーカーが作ったWacom One向けのペンが15g、私が使用しているHuion製液タブのペンが14gと、やはりApple Pencilよりも軽いです。
スマホに接続できる(条件は厳しい)
近年ではスマートフォンに接続して使える液タブが増えてきました。
これにより、PCを持っていない人でも液タブに乗り換えやすくなることが期待されますし、持ち運びの面でもノートPCが必要なくなります。
ただ……問題なのが対応するスマホの少なさで、AndroidかつUSB3.1 Gen1、Displayport1.2以上に対応していることが条件です。
最新機種でも対応していない場合があるため、スマホでの使用を考えているのであれば事前確認は必ず行うようにしましょう。
ペイントソフト(アプリ)をフル機能で使える
iPad版のペイントソフトも多くの改良を重ねてより便利に使いやすくなっています。
実際、モバイル版とPC版とで機能面の差は少しずつ埋まってきていますが、完全に解消されるのにはまだまだ時間がかかりそうなのが現実です。
例えばCLIP STUDIO PAINT EX というペイントソフトだと、「複数ページ作品の印刷・書き出し」機能の一部や「プラグイン機構」が利用できません(参照元: ラインナップ | CLIP STUDIO PAINT)。
機能を使おうと思ったら対応していなかった……といった想定外のトラブルを心配しなくていいのは、液タブとPCの組み合わせならではのメリットと言えます。
描かなくなってもモニターとして使える
液タブでお絵かきをしなくなったとしても普通のモニターとして使用できます。
PCやNintendo SwitchのようにHDMI端子や(映像出力対応の)USB Type-Cがあるデバイスなら映像出力が可能です。
家のテレビやメインモニターと比べると小さいため、モバイルモニターのような持ち運び用・サブとしての使い方をするとよいでしょう。
モニターとして使うならスタンドの用意を忘れずに
液タブについてもっと知りたいという方は、こちらの記事もどうぞ。
iPadが優れている点
続いてiPadが優れている点を見ていきましょう。
元々優秀だった携帯性に加えて、性能もアプリも液タブと遜色ないまたはそれ以上のレベルを実現しています。
単体で使える
液タブはいわば専用タッチペン付きのモニターみたいなものなので別途PCが必要ですが、iPadであれば単体で使えます。
他の機器とケーブルで接続する必要が無いため移動が楽で、液タブよりもごろ寝の作業や出先での使用に適しています。
iPadの一番大きいサイズでも持ち運ぼうと思えばできるレベルで、少なくともノートPCと液タブをセットで持ち歩くよりかはマシです。
性能は並の液タブを超える
iPadは画面の美しさに注目されがちですが、お絵描きにおいては視差の少なさも優秀で、紙とペンに近い感覚で線を描けます。
液タブにもiPadと同様に視差が少ない加工(フルラミネーション)がされている製品が増えてきているものの、その品質はピンキリといったところです。
そもそもフルラミネーション加工されていない液タブもまだまだあるので、この要素一つを取ってもiPadは性能面で大半の液タブを超えてしまっていると言えます。
一つ補足ですが、すべてのiPadで視差が少ないわけではありません。無印モデルや2013年以前のモデルは非対応なので選ぶ際は気をつけてくださいね。
また、第2世代以降のApple Pencilは描き心地の評判も非常に良く、液タブと同様に筆圧・傾き検知に対応している上に超がつくほどの低遅延です。
当然iPad Proとの組み合わせがベストで、エントリー向け液タブどころかプロ向けの液タブにも引けを取らないレベルのハイパフォーマンスを発揮してくれます。
iPadならではのお絵かきアプリが使える
最近では「CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)」や「Photoshop」のようなPCでおなじみのソフトも、フル機能とまではいかないもののiPadで利用できるようになってきています。
上記のアプリも魅力的ですが、iPadで絵を描くなら「Procreate」を一度試してみるべきでしょう。
安価な買い切りアプリでありながらも高性能なブラシ・ツールが揃っており、iPadに最適化されたシンプルな画面で快適に作業できます。
PC版の方が強力・多機能なイメージがありますが、iPadはiPadで十分本格的なイラスト制作が可能です。
周辺機器・アクセサリー類が豊富
これはApple製のスマホやタブレット特有の強みで、純正に頼らなくても質の高いサードパーティ製の周辺機器・アクセサリーが充実していてカスタマイズ性が高いです。
本格的にお絵かきするならApple Pencil一択レベルというのはさておき、どうしても手が届かないなら数千円のペンがいくらでも見つかります。
保護フィルムも多種多様なので、好みの描き心地を求めて色々試してみることも可能ですね。
またMagSafe(マグネット)を生かしたタブレットスタンド・充電器が使えるというのが魅力的で、高い利便性とデザイン性を両立した環境を実現できます。
Android・Windows派の私ですが、MagSafeに関しては正直言ってメチャクチャ羨ましいです……
描かなくなっても使い道が多い
液タブはモニターとして使えると話しましたが、iPadではお絵描きしなくなってもゲームや動画視聴など高性能なタブレットとしていくらでも使いようがあります。
万が一お絵かきに挫折してしまったらどうしようと不安に思っている方は、モニターとタブレットどちらが欲しいかを考えてみると良いかもしれませんね。
iPadと液タブ初心者にはどっちがおすすめ?
ここまで液タブとiPadそれぞれの優れている点を紹介してきましたが、簡単に表にまとめるとこのようになります。
液タブ | iPad Pro +Apple Pencil | |
---|---|---|
描き心地 | ○~◎ | ◎ |
画面サイズ | ◎ | ○ |
持ち運びやすさ | △~○ | ◎ |
ソフト・アプリ | ◎ | ○ |
スマホ対応 | △ | – |
お絵かき以外の用途 | モニター | タブレット |
結論、予算を考えないならiPadをおすすめします。
液タブの方が優れている点を多く挙げてきましたが、iPadの方が
デジタルイラストをやってみたいけど長く描き続けるかは分からない
もしかしたらすぐにやめてしまうかも
といった人でもゲームや動画視聴、ネットサーフィンなど別の使い道が多くて無駄になりにくいからです。
普通のタブレットとして見ても高性能なので、イラスト制作以外でも快適にこなせることでしょう。
また、仮にそういった使い道に興味がなくても、iPadというブランド力のおかげで高値で売れます。
ただし私からおすすめできるのは、iPad mini・Air・Proといった第2世代以降のApple Pencilに対応した製品です。
無印版+第1世代Apple Pencilはお手頃な組み合わせではありますが、性能も使い心地も大きく変わってくるためよく考えてから選びましょう。
一方で、液タブがおすすめなのはこのような人です。
- 既にPC・対応スマホを持っている人(購入予定の人も)
- 広い画面でお絵描きしたい人
既にPC・対応スマホを持っている人なら、最安は2万円台から購入できるためiPad Proよりはるかに安い金額でお絵かき環境を整えられます。
4万円近辺からは15.6インチの定番液タブが、7~8万円出せると20インチ超えの液タブにも手が届くため、様々な希望・予算に合わせた選択ができるのもおすすめポイントです。
おまけ: iPadを液タブみたいに使うには
ここまでiPadとPC+液タブという構図で比較してきましたが、実はiPadを液タブ化、つまりパソコンの画面を映して使う方法が存在します。
環境によって方法が異なっていて、macOSのPCならSidecarという標準搭載の機能を、WindowsならDuet DisplayのPro版やLuna Display for Windowsというソフト・ハードウェアを使うことで実現可能です。
macOSのPCを使用している人であれば追加費用無しでできるため、試してみる価値はあると思います。
一方でWindowsのPCとiPadを繋ぐには別売りのソフトやハードウェアを購入する必要があるので、どうしてもという方以外にはおすすめしづらいところです。