ペンタブ・液タブといえばワコムのイメージが根強いですが、他のメーカーと何が違うのか気になったことはありませんか?
液タブの購入を検討している方なら、ワコム製液タブにはどんなものがあるのか、何がおすすめなのかといった点にも興味があるはずです。
そういった疑問に答えるべく、本記事ではワコム製品の特徴と、2023年8月現在展開されている液タブの各シリーズについて解説していきます。
近年は他のメーカーもクオリティが上がってきており、非常にコスパよく液タブを入手できるようになりました。そんな中でワコム製を選ぶことにどんなメリットがあるのか、今回の記事を通して確認していただけたらと思います。
また各シリーズの解説ではどんな人におすすめかについても言及していますので、購入時の参考になれば幸いです。
ワコム製液タブの特徴
・日本メーカー
HuionやXP-Pen、Gaomonといった多くのペンタブメーカーが中国という中で、ワコムは数少ない日本のメーカーです。「数少ない」と表現していますが、液タブではワコム以外のメーカーを聞きませんね。
応援の気持ちを込めてワコム製品を購入するというのも、理由としてありだと思います。ただし日本メーカー=日本製というわけではないため、メイドインジャパンに強いこだわりのある方はその点だけ注意してください。
実用面でのメリットは、説明書やオンラインマニュアルがまともな日本語で書いてある点が挙げられます。操作に不慣れな初心者にとっては、これだけでワコムを選ぶ理由になり得るのではないでしょうか。
・最大手でユーザーが多い
競合他社が力を付けてきたとはいえ、依然としてワコムが最大手です(参照元)。2021年時点の情報ではありますが、変わらず高い人気を維持していると考えてよいでしょう。
これほど多くの人に買われ続けているということは、相応に良い商品だからこそだと言えます。ユーザーが多いとネット上の関連情報も充実するため、トラブルに見舞われても解決策を探しやすいです。
またワコム製の液タブは取り扱っている家電量販店が多いため、気軽に実物を試用できるという強みもあります。
・ペンの性能が優秀
他メーカーの液タブをいくつか使ってきた上での個人的な意見になりますが、ペンの性能に関してはやはりワコムが優秀という印象です。
ペンの沈み込みや安定感、滑りといった点では他社製も引けを取らない反面、傾き検知を使った際の表現幅ではワコムが頭一つ抜けています。
↓Huion Kamvas Pro 16(2.5K)の場合
縦・横はそれなりに幅が出ますが、斜め方向が安定しません。
↓Wacom Cintiq 16の場合
同じツール・設定でここまで描画に違いが出ます。
最初に使った液タブがCintiq 16だったので、他社の液タブに触れるまではこれが当たり前だと思っていましたね。
実のところ、筆者が現在使用しているのはKamvas Pro 16(2.5K)の方なのですが、もし上の動画のような表現を多用するスタイルだったらCintiq 16を使い続けていたと思います。
・コスパの良さはいまひとつ
通販などで液タブを調べたことのある方ならお気づきかと思いますが、ワコムの液タブは他社の同等クラスの製品と比べて値段が高いです。
いくらワコム製が優れていると言っても、今では他社の製品とそこまで大きな差がありません。9万円するワコム製液タブと同等か少し下くらいの性能を持った液タブが5~6万円で買えると知っていたら、果たしてどれくらいの人がワコム製を選ぶでしょうか。
とはいえ、安物買いの銭失いをしたくない人なら、多少高くてもワコムの液タブを買うのが確実でしょう。後で買い直すくらいなら、初めから良いものを買っておいた方が結果として出費が安く済みますからね。
おすすめはどれ? ワコム製液タブのラインナップ
普段の記事では数点に絞り込んで紹介するところですが、今回はワコム製品のみで数が多くないため、各シリーズの紹介と、それぞれがどんな人におすすめかを解説する構成になっています。
多くの人にとっては何よりまず予算の問題があると思うので、価格の安いWacom Oneシリーズから順に解説を進めていきます。
ぜひ予算内で自分に合った液タブを探してみてください。
Wacom One

製品一覧 |
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Wacom One 液晶ペンタブレット 13 (gen.1) |
Wacom One 液晶ペンタブレット 12 |
Wacom One 液晶ペンタブレット 13 touch |
【予算の目安: 4万円~】
ワコムで一番安いエントリー向けの液タブがWacom Oneシリーズになります。
13インチと液タブとしては小型で、持ち運びがメインの人にもおすすめ。一部のAndroid機でも使用可能です。
ペンについては、上位機種とは異なるWacom One独自のものが採用されています。文房具メーカーからも専用ペンが発売されており、様々なペンから好みのものを使えます。
デメリットは先程も述べたように小型であることです。画面が窮屈なので、キャンバスのズームや移動を多用することになります。性能面でもCintiqと比べて一段落ちるため、その点は注意が必要です。
ちなみに2023年8~9月に登場する新型は、性能アップや軽量・コンパクト化が施され、ペン・本体のデザインもよりポップで可愛らしくなりました。ラインナップに12インチが登場したほか、13インチモデルにはタッチ機能が搭載されています。
Amazonで確認しましたが、新型の13インチモデルが9万円台(2023年8月18日時点)とやけに高額なのが気になります。旧型の13インチを買うか、新型が安くなるまで待った方がいいかもしれません。
Cintiq

製品一覧 |
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Wacom Cintiq 16 |
Wacom Cintiq 22 |
【予算の目安: 9万円~】
元々エントリー向けでしたが、Wacom Oneが登場してからはアマチュア向けのような位置づけに。初心者・アマチュアにとどまらず、このシリーズを使用しているプロの方も見かけます。
Cintiq Proから機能・性能を削って価格を抑えたのがCintiqですが、このシリーズの大きな特徴と言えるのがCintiq Proと同じWacom Pro Pen2を採用している点です。
個人的には、今でも描き心地に関してはWacom Pro Pen2が他のメーカーから頭一つ抜けてると思っています。他社のペンとの違いは上に掲載した動画の通りです。
描き心地といえばiPad Proも評判が良いですが、Cintiqはサイズで差別化できます。16インチと22インチの2種類があり、人によっては16インチでも十分大きいと思えるでしょう。
画面が大きいと作業の疲労感も少ないため、一度慣れてしまうとスマホでお絵描きするのが考えられなくなるかもしれません。
Cintiq Pro

製品一覧 |
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Wacom Cintiq Pro 16 (2021) |
Wacom Cintiq Pro 24 |
Wacom Cintiq Pro 24 ペンモデル |
Wacom Cintiq Pro 27 |
【予算の目安: 20万円~】
名前の通り、プロ向けとして作られた液タブがCintiq Proシリーズです。
Cintiqと比べて解像度が4Kと高めで、16インチの他にも24、27インチの大型サイズがあります。
色域もAdobeRGBをほとんどカバーしているほどの広さで、ペンモデル以外はタッチ機能に対応している点もこのシリーズの特徴です。
そして新型のCintiq Proには、Wacom Pro Pen3が採用されている点も大きなポイントと言えます。

なんとWacom Pro Pen3では、作業スタイルに合わせてグリップの太さやサイドスイッチの数、ペンの重心をカスタマイズできちゃいます。ここまでできるペンは他に聞いたことがありません
プロ向けなだけあってあらゆる要素が高レベルに仕上がっているCintiq Proシリーズですが、なにせとんでもなく高価ですので、初心者がいきなりこのシリーズを購入するのはおすすめしません。
MobileStudio Pro

製品一覧 |
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Wacom MobileStudio Pro 13 2nd generation |
Wacom MobileStudio Pro 16 2nd generation |
【予算の目安: 30万円~】
Wacomストアではクリエイティブタブレットという扱いになっていますが、ここでは液タブの一種としています。
本来の液タブはペンで操作できるモニターのようなものであって、PCなどのデバイスに繋がないと使えません。しかしこのMobileStudio Proは特殊で、液タブとPCをひとまとめにしてしまったトンデモ製品です。
液タブとPCが一緒になったということは、この製品単体で動作することを意味します。家の中で使うにしてもPC分のスペースを節約できるようになりますし、持ち運ぶにも普通の液タブと比べて一段と快適です。
ちなみに外部のPCと接続すれば普通の高性能液タブとしても使えるので、この製品に搭載されているPCのパーツが古くなっても別のPCを用意することで快適に使い続けられます。
サイズは13インチと16インチの2種類のみ。大型は取り扱っていないため、家で腰を据えて作業したいならCintiq Proシリーズの方がおすすめです。
発売から時間が経っているためか、現状では在庫が復活せず新品の入手が困難となっています。果たして新モデルは発売されるのでしょうか。
まとめ
日本のメーカーであること、長年の実績と高いシェア率に裏付けされた信頼性の高さがワコムの魅力です。
近年では海外の競合メーカーも性能が大きく向上してコスパの高さが際立つようになりましたが、確実に良い製品を手にしたい人にとっては、依然としてワコムが有力な選択肢となるでしょう。
また、同じワコムの液タブと言ってもシリーズごとに価格も性能も大きく異なるため、各々の予算や目的に合わせてじっくり比較検討していただけたらと思います。
最期に各シリーズについて表でまとめましたので、ぜひそちらもご活用ください。
(2023年 8月時点) | Wacom One | Cintiq | Cintiq Pro | MobileStudio Pro |
予算の目安 | 4万円~ | 9万円~ | 20万円~ | 30万円~ |
画面解像度 | フルHD (1920×1080) | フルHD (1920×1080) | 4K (3840×2160) | 13: WQHD (2560×1440) 16: 4K (3840×2160) |
画面サイズ | 11.6インチ 13.3インチ | 15.6インチ 21.5インチ | 15.6インチ 23.6インチ 26.9インチ | 13.3インチ 15.6インチ |
ペン | Wacom One スタンダードペン | Wacom Pro Pen2 | 16/24: Wacom Pro Pen2 27: Wacom Pro Pen3 | Wacom Pro Pen2 |
マルチタッチ機能 | 12: × 13: ◯ 13(gen.1): × | × | ペンモデル: × それ以外: ◯ | ◯ |
その他特徴 | 一部のAndroidに対応 文房具メーカー製の対応ペンが使用可能 | – | 画面の色表現力が高い ExpressKey(ショートカット)搭載 ※16インチモデル除く | 単体で使える OSがWindows |