
液タブの性能を調べたいんだけど、知らない言葉ばかり出てきて難しい…
少しでも性能を知りたくて公式サイトのスペック表を見ているのに、見慣れない用語だらけで結局よく分からないままになっていませんか?
こんにちは、絵描きの京時ロメ(@kyotoki_OX)です。
今回は筆者自身の学習も兼ねて、ペンタブ(板タブ・液タブ)のスペックに関係する用語をまとめてみました。
ペンタブを購入する際は、ぜひお役立てください。
ペンタブ共通の用語
ここでは板タブと液タブ両方で見ることになる用語を解説します。
インターフェース(接続方法)
自分のパソコンやスマホで使えるかどうかを知るために、必ず確認しておきたい項目です。
接続方法は大きく2つに分けられ、
- 有線(ケーブル)接続
- 無線(ワイヤレス)接続
のどちらか、製品によっては両方に対応していることもあります。
有線(ケーブル)接続

有線は接続が安定する点、充電が不要な点がメリットです。
デメリットはやはりケーブルが邪魔になることが挙げられます。
ペンタブを有線で接続する際はUSBという規格を使いますが、これはパソコンをはじめ、多くのスマホ・タブレットにも接続口が付いています。
USBの中にも色々と種類があり、詳細を説明すると記事が1つ2つできるボリュームになるため、ここでは接続口の形状が違うことだけ覚えておけば大丈夫です。
最近のペンタブだとUSB Type-AかUSB Type-Cのどちらかなので、接続したいデバイスにこれらの差込口があるかをしっかり確認しておきましょう。
無線(ワイヤレス)接続

ケーブルが邪魔だった有線に対し、ケーブルなしで使えるのが無線接続です。
机の上がスッキリするだけでなく、移動の自由度が格段にアップするため、寝転がってお絵描きするのにも向いてます。
主な欠点としては、やはり充電が必要になることや反応が遅延してしまう可能性が挙げられます。
とはいえ、たいていの無線対応ペンタブは有線でも接続できるようになっているため、迷った時は無線対応を選んでおけば大丈夫です。
無線接続の方法には2つあり、
- 2.4GHz接続
- Bluetooth接続
のどちらかに対応しています。
2.4GHz接続はUSBレシーバー(ペンタブからの信号を受け取る機器)をパソコンやスマホに挿して使う方法です。
ペンタブに付いてくるUSBレシーバーで手軽にワイヤレス接続が楽しめます。
一方のBluetooth接続は、Bluetoothに対応したパソコン・スマホであればレシーバーなしで通信可能です。
ペンタブにおいてはどちらの接続方法でも使用感に大きな違いはないため、自分のパソコンやスマホ、タブレットが対応している方を選びましょう。
傾き検知
傾き検知機能に対応しているペンタブでは、傾きに応じて違う描き味を出せるようになります。
下の動画はCLIP STUDIO PAINTの標準鉛筆ツールを使っているのですが、立てて描くのと倒して描くのとでここまでの違いが出ます。
ただし、ペンタブが対応していてもソフトやツール側が傾き検知に対応していないと意味がないため、注意が必要です。

特に無料ソフトだと傾き検知に対応していないことが多々あります
デジタルでもできるだけアナログに近い描き心地がいい人は、必ず傾き検知に対応しているペンタブ、ソフトを選ぶようにしましょう。
作業領域

読み取り可能範囲やアクティブエリアといったように、その呼び方はメーカーによって様々です。
作業領域はペンタブ本体の大きさではなく、実際にペンが反応する領域の広さのことを指します。
伸び伸びと描けるペンタブを求めているのなら作業領域は必ずチェックしておきましょう。
液タブでは「モニターのサイズ=作業領域」ということになります。
寸法 (L x W x H)
ペンタブ本体の大きさが寸法にあたります。
LはLength(長さ)、WはWidth(幅)、HはHeight(高さ)を意味します。
ペンタブにおいては一番大きい数字が横幅、次に大きい数字が縦幅(長さ)、一番小さい数字が厚さ(高さ)と覚えておけばOKです。
対応システム(OS)
デバイスでアプリ・ソフトを動かすための土台となる基本ソフトがOSです。
パソコンならWindowsやmacOS、スマホ・タブレットならAndroidやiOSといったものがOSにあたります。
ペンタブだとiOS以外なら対応しているという製品がほとんどですが、念のため目を通しておきましょう。
タッチ入力
タッチ入力対応のペンタブは、指でのタッチにも対応していることを意味します。
二本指を使ってのズームやキャンバスの移動など、スマホのように直感的な操作が可能です。
ただし誤反応の原因にもなるため、タッチ入力のON/OFFを切り替えられるかどうかは必ず確認しておきましょう。
認証
様々な国・組織の法律や規格の認証試験を受けて認められたものが記載されています。
RoHSやCE、WEEEなど多種多様ですが、怪しいメーカーのペンタブでもない限りはあまり気にしなくて大丈夫です。
筆圧レベル
ペン先に加わった筆圧を何段階で表現できるかを表します。
数値が大きいほど細かい筆圧の変化を読み取れるようになるため、繊細なタッチが必要な創作ほど重要です。
ただ近年ではほとんどのペンタブが8192段階以上、少なくても4096段階はあるので、筆圧レベルを特別意識せずとも十分な性能を持っています。
ファンクションキー(ショートカットキー)
ペンタブに搭載されている電源以外のボタンのことですね。
何回もクリックが必要な機能・操作を割り当てておけば一発で呼び出せるようになるので、上手く使いこなせば大幅な時間短縮が狙えます。
ペンタブだと最初からやり直し機能やズームが割り当てられていることが多く、設定しなくてもそれなりに便利です。
ただ、手が当たって間違えて押してしまうことがあるように、必ずしもプラスに働くとは限りません。
こういったボタン類は設定で無効化できるようになっているので、覚えておきましょう。
ホイール
役割としてはファンクションキーと同じ。ファンクションキーが押すのに対して、ホイールは回すタイプです。
その特性からキャンバスの回転を割り当てたり、マウスホイールの代わりにしたりするのに向いています。
とはいえ、無理にホイール付きを選ぶほど重要度は高くありません。
読み取り可能高さ
ペンタブがペンを認識してくれる高さを読み取り可能高さと言います。
ペンを作業領域から浮かせてみると、画面のカーソルがちゃんと動いてくれる範囲があるのが分かるはずです。
何かを描いている時にはもちろん関係ありませんが、ペンボタンを使いたい時は読み取り可能高さが高いほど融通が効いて扱いやすくなります。
読み取り精度

実際にペンを置いた位置と、デバイスに送られる位置データの間で生まれる差異の値です。読み取り精度の値は小さければ小さいほど優秀であることを意味します。
ペンタブは作業領域の端であるほど精度が落ちますが、実際はほとんどが中央付近での作業になるので不快に思うことは滅多にありません。
多くの製品は中央なら0.25mm~0.5mm、端なら1mm~3mmの範囲で作られているため、そこまで気にしなくても大丈夫です。
板タブだと、手元を見ることがないのでなおさらズレが分かりません。
読み取り速度
他にも反応時間だったり、レポートレートだったりと、メーカー・製品によって呼び方はバラバラです。
読取速度はペンを動かしてから実際に線が引かれるまでの時間に影響します。
ゆっくり動かす分には遅延が感じられませんが、素早く動かしていると遅れて線が描画されているのが分かります。
ただし、実際にお絵かきする中で読取速度による違いを実感することはまず無いため、参考程度に留めておいてOKです。
メーカーごとに表記が違えば単位も違うので、それぞれの意味を簡単にまとめまると次のとおりです。
- レポートレート(RPS)…単位はReports Per Secondの略で、1秒間にペンタブが送れる情報(ペンの位置・筆圧)の数を指す。RPSは高いものが良い。
- 読取速度(ポイント/秒)…1秒あたりにペンの動きを検知できる回数のこと。レポートレートと同様と考えて問題ない。
- 反応時間(ms)…ペンを走らせてから実際に描画されるまでの時間をミリ秒で表している。液タブのスペック表で用いられ、時間が短いほど性能が高い。
さらに詳細を知りたい方はこちらの記事も参考にどうぞ。

読み取り分解能(ペン解像度)
ペンタブ上にどのくらいの間隔でペン先を検知するセンサーがあるのか表したのが読み取り分解能です。
印刷物を近付けた時に見える点の集まりをイメージするといいでしょう。
読み取り分解能が細かいほどペンの微細な動きも読み取れるようになりますが、現行モデルのペンタブはどれも十分すぎる読み取り分解能を備えているため、製品選びにおける重要度は低めです。
より詳細な情報についてはこちらの記事が参考になります。

メーカーによって読み取り分解能とペン解像度で表記が分かれており、それぞれの意味は次の通りです。
- 読取分解能(mm)…ペン先を検知するセンサーの間隔。短いほど良い。
- ペン解像度(LPI)…1インチ(= 25.4mm)あたりのセンサーの数。多いほど良い。
Wacomの製品ページを見てみると0.005mm = 5080LPIとのことなので、別メーカーの製品と比較するならこの数字を基準にするのがおすすめです。
読取方式
ペン先の動きを読み取るために使われている技術のことで、主に次のような方式があります。
- 電磁誘導(EMR)方式…精度が高く、筆圧検知が自然。バッテリー不要。ペンタブで採用される方式。
- 静電結合(AES)方式…EMRの次に精度が良い。指のタッチに対応しているペンタブで採用される。
- 静電容量方式…スマホ・タブレットのタッチパネルがこれ。精度は低め。
ペンタブ選びにおいては現状どの製品も電磁誘導方式が採用されているため、確認程度に見ておくだけでOKです。
中には電磁誘導方式と静電結合方式の両方が記載されている製品がありますが、それは指によるタッチにも対応したペンタブであることを意味します
液タブ(モニター関連)の用語
ここからは液タブ独自の用語を解説していきます。
液タブだけでなく、イラスト向けモニターを選ぶ際にもぜひお役立て下さい。
アンチグレアガラス

アンチグレア(AG)ガラスは映り込みの少ない表面処理をした液晶画面のことで、非光沢とも呼びます。
光の反射が抑えられるため画面が見やすくなり、目への負担が軽減されます。
程度の差はあれど、全ての液タブにはアンチグレアガラスが採用されているため、液タブ同士で比較する必要性は低いです。
アスペクト比
液晶画面の縦と横のピクセル(px)の比です。例えば解像度フルHD(横1920px x 縦1080px)の液タブなら1920 : 1080 = 16 : 9がアスペクト比となります。
横が縦に比べてどれだけ長いかといった、画面のおおよその形を把握するのに有用です。
VESAマウント

VESA規格に対応した、モニター・液タブの背面にあるネジ穴のことをVESAマウントと言います。
これがあるとディスプレイアームや一部のスタンド、壁掛けなどに装着が可能です。
サイズによってVESAマウントのネジ穴の間隔や数、使うネジに違いがある点は注意しましょう。
また、全てのモニター・液タブにVESAマウントが搭載されているわけではないので、使いたいなら事前のチェックが必須です。
液晶方式(LCDタイプ)
モニターにはいくつかのタイプに分けられており、それぞれ違った特徴があります。
主な方式は次の3つです。
- IPS(ADS)方式…角度による色・輝度変化が小さく、発色が良い。液タブのモニターは全てこの方式。
- TN方式…角度による色変化が大きく、イラスト制作に不向き。低コスト。
- VA方式…視野角・色再現性はIPSとTNの間くらい。黒の表現が得意。
どの液タブでもIPS方式が採用されているように、イラスト制作用のモニターを選ぶ場合もIPS方式をおすすめします。
画面解像度
映像を映し出すためのドット(ピクセル)の数。多ければ多いほどきめ細やかに表示できるようになります。
現在の主流はフルHD(1920px x 1080px、1080p)で、エントリーモデルの液タブもこの解像度が採用されています。
フルHDの上を行くQHD(2560px x 1440px、1440p)や、4K(3840px x 2160px、2160p)の液タブが欲しいなら最低でも10万円は用意したいです。
輝度
画面から発することができる明るさの度合いで、単位はcd/m2です。
数字が大きいほど画面を明るくできるため、明るい場所での視認性が高くなります。
高輝度が必要なのはリビングで使われるテレビのような製品で、液タブにおいてはさほど重要ではありません。
コントラスト比
画面の最大輝度(白)と最小輝度(黒)の輝度比です。
例えば液タブのスペック表を見て、輝度が220cd/m2(最大)でコントラスト比が1000:1だったのなら、220/1000 = 0.22cd/m2が最小輝度ということになります。
コントラスト比は基本的に高い方が良いとされており、高いほど暗い部分・明るい部分を正しく表示できます。
ただ現状の液タブのほとんどは1000:1なので、比較をする際に見ることは少ないです。
色域
人間の目が認識できる色の中から、特定の範囲を定めた規格・ルールが色域です。
制作物をやり取りするときに、両者が同じ色域に設定した機器を使うことで、表示される色の差異を減らすことができます。
代表的な規格としてはsRGB・AdobeRGB・DCI-P3などがあり、扱う色の範囲は「sRGB<DCI-P3<=AdobeRGB」といった具合です。
お絵かきで使うなら、一般的なデジタル機器に用いられているsRGB規格を100%カバーできていることが最低条件です。
最近ではDCI-P3に準拠したDisplay P3という色域を採用した機器も増えているため、可能ならDCI-P3までカバーしている製品を選ぶと良いでしょう。
ちなみに「〇〇比◯%」=カバー率ではありません。
これは「色域と一致しているかは別だけどこれだけの数の色を表現できますよ~」という表現なので、できるだけカバー率が記載された製品を優先してください。

図形で例えてみます。「カバー率100%」が「面積も形も一致している図形」なら、「比100%」は「面積が同じ図形」と言っているだけのようなもので、形も同じだとは限らないのです。
視野角
モニターや液タブを斜めから見た時に、表示が正しく見える角度を視野角と言います。
視野角は広ければ広いほど良く、様々な角度からの鑑賞に対応できるようになります。
液タブに関してはどれも170°以上の十分な視野角を備えているため、気にしなくても良いです。
余談ですが、スマホのように外で使う場合は覗き見のリスクもあるので、必ずしも広視野角が良いとは限りません。
ビデオインターフェース
液タブはペンタブの情報を送るためのケーブルに加えて、画面を映すためのケーブルが必要となります。
そのケーブルにも色々と種類があり、液タブでは以下の2つが使われています。
- HDMI…テレビやパソコン、ゲーム機によく採用される規格。接続口は凸を潰したような形をしている。
- USB Type-C…これ1本でペンタブの情報のやり取りと映像出力を、製品によっては給電も行える。スマホ接続をする場合もこちらを使う。ただし、USB-Type Cの中でもオルタネートモードまたはThunderbolt 3に対応しているデバイスでないと使えない。
便利さで言えばUSB-Type Cの方が明らかに上ですが、対応条件が少し難しいものとなっています。
USB-Type Cで接続するつもりなら、自分の機器が対応しているかの下調べは必ず済ませておきましょう。
画素ピッチ(PPI)
画面を作っているドット(ピクセル)の物理的な大きさです。
Wacomでは「横 x 縦 mm」でピクセルの大きさを掲載しており、HuionなどではPPI=Pixels Per Inch(1インチあたりのピクセル数)で画素ピッチを表しています。
表示サイズ(パネルサイズ)
一言でいうと画面の大きさです。
画素ピッチを見るよりもこっちを見たほうがイメージしやすいのではないでしょうか。
解像度とセットで見て、「フルHDにしては大きい方だな」といった判断ができるようになれば十分です。
メーカーによっては板タブと同様に作業領域として表記されていることもあります。
最大表示色
モニターが表現できる色の数です。パソコンやスマホはbitと呼ばれる情報の単位で色を表現しています。
液タブのモニターはフルカラー(8bit)と呼ばれる表示色で、1677万色(R256 x G256 x B256)の表現が可能です。
高価なモニターだと10億7374万色フルカラーなるものが存在し、グラデーションの表示がなめらかになります。
フルラミネーション

液晶モニターは複数の層が重ねられてできており、液晶パネルから表面のカバーガラスまでの層を圧着、一体化させる技術をフルラミネーションと呼んでいます。
液晶パネルからカバーガラスまでの隙間がほとんどなくなり、光の反射が抑えられ視認性が高まるのが特長です。
また液タブのようにタッチ操作をする場合では、ペンとモニターの間にガラスが挟まっている感覚が薄くなるため、より自然な描き心地を表現できます。
まとめ
以上、ペンタブの用語解説でした。
スペック表で見かける項目はあらかた網羅したつもりですが、今後も必要に応じて内容を追加・変更していきます。
本記事を通して皆さんの板タブ・液タブ選びが少しでも楽になれば幸いです。