板タブ・液タブ

【実機レビュー】Wacom Cintiq 16 FHDを1年半使ってみた感想

4.0
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Cintiq 16をよくおすすめされるけど、実際はどうなの?Wacom OneやCintiq 22も気になる……

こんにちは、絵描きの京時ロメ(@kyotoki_OX)です。

海外製の液タブも高性能になってきた今もなお人気のワコム製液タブ。その中でも、定番とも言えるミドルクラスの液タブ『Cintiq 16』をレビューします。

本製品を約1年半使ってきた筆者が、これまでに感じた良い点・微妙な点をまとめてみました。

また、購入の際に気になるであろう疑問点や、2024年現在の評価についても話していきます。

初めての液タブで購入を迷っている方はぜひお読み下さい。

良い点
  • Wacom Pro Pen2が優秀
  • 15.6インチのちょうどいいサイズ感
  • フィルムなしでも十分快適
  • VESA マウントに対応
イマイチな点
  • USB Type-Cでの接続に非対応
  • ショートカットキーがない
  • 折りたたみの内蔵スタンドがおまけレベル
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Wacom Cintiq 16 FHDのスペック

※スマートフォンで閲覧中の方は表を横にスクロールできます。 

外観

cintiq 16 外観

寸法(横×縦×厚さ)

422×285×24.5mm

重量

1.9kg

液晶画面

サイズ

15.6インチ

液晶方式

IPS

解像度

1920×1280(フルHD)

sRGBカバー率

96%

NTSCカバー率

72%

応答速度

25ms(標準値)

視野角

176°(標準値)140°(最小値)

ペン性能

筆圧レベル

8192段階

傾き検知

±60°

充電

不要

スイッチ

サイドスイッチ×2 / テールスイッチ

タッチ入力

×

ボタン

×(電源ボタンのみ)

スタンド

折りたたみスタンド(19°)

接続方法

HDMI & USB-A

▶つまりこのスペックってどうなの?

他社が近年リリースした同クラスの液タブと比べて、特に突出している点もなければ大きく劣っている点もない、標準的な性能といえます。

一方で利便性という点では型落ち感がどうしても出ており、16インチ帯の製品の中では重量が重く、サイズも大きいほか、USB Type-Cケーブルでの接続に対応していません

Wacom Cintiq 16 FHDを実際に使った感想

ここでは1年半Cintiq 16を使ってきた感想をありのまま書いていきます。

折りたたみスタンドやケーブルで少し不便な点がありましたが、それ以外については満足です。

ツルツルしすぎず描きやすい

フィルムを貼った分の厚みで視差が大きくならないか不安だったので、別売りのフィルムは貼らずに使用しています。

そのままでもスマホやタブレットの画面ほどツルツルしておらず、サラサラと程よい摩擦があって描きやすいと感じました

もし紙のような描き心地を求めるなら、別売りのペーパーライクフィルムを貼るのがおすすめです。

ただし、摩擦が強くなるので芯の減りが早くなる点は注意しましょう。

16インチでちょうど良かった

サイズの大きい液タブに憧れていましたが、結果として16インチというサイズは私の使用環境にぴったりでした。

もし22インチを選んでいたら、机の上にノートPCとマウス、キーボードまで置く余裕が無かったかもしれません。

ただ、15.6インチの液晶画面も十分なサイズとはいえ、大きい液タブで描いている絵師さんの広々とした画面を見ると少し羨ましくなります。

反射が少なく見やすい

画面の光沢 比較

他の液タブでも同様のことが言えますが、液晶画面の表面にアンチグレア(非光沢)加工のフィルムが貼ってあるおかげで反射が抑えられており、画面が見やすくなっています。

アンチグレア加工はグレア加工と比べて目が疲れにくく、長時間になりがちなクリエイティブな作業にピッタリです。

とはいえあまりにも強い光はやっぱり邪魔になるので、置き場所には気をつけましょう。

京時
京時

照明や日光が直接当たる配置は避けたほうが無難です

画面の綺麗さは可も不可もなく

液晶画面は値段相応、一般的なフルHD・IPSパネルのモニターと同等レベルです。若干黄みがかかっているように感じます。

iPadのように「めっちゃキレイ」な画面を期待しているとガッカリするかもしれません。

各種色域のカバー率も抑えられており、色の正確さが求められる場面では力不足かと思います。

作風・仕事などの関係で色の正確性がそこまで重要ではない場合や、趣味で絵を描いている場合は特に気にしなくて大丈夫です。

イラスト制作に適したモニターがどんなものなのか詳しく知りたい方は、こちらの記事もどうぞ。

片手デバイスが欲しくなる

Cintiq 16は良くも悪くもスッキリしていまして、本体には電源ボタン以外のボタンがありません。

またタッチ機能もないため、いかに片手を使うかがイラスト制作の快適さに大きく影響します。

キーボードのショートカットだと手が疲れるので、Joy-Conを片手デバイスとして愛用していました。

京時
京時

正直な話、ボタンやタッチ機能があったとしても、結局片手デバイスを使っていたと思いますね。

折りたたみスタンドは使いづらい

本体に付属している折りたたみスタンドを使えば、手軽に19°の角度をつけることができます。

ただ、長時間使うには安定性が足りないというのが正直な感想です。

VESA規格に対応しているのでモニターアームに付けるのもいいですし、専用のスタンドを買ってしまうのが良いと思います。

京時
京時

安く済ませたいならノートPCのスタンドでも代用可能です

電源ケーブルが長すぎる

3 in 1ケーブルのイメージ

Cintiq 16のケーブルは3 in 1ケーブルといって、電源ケーブル・USBケーブル・HDMIケーブルが「途中まで」1本にまとめられています。

聞いただけだとスッキリしていて良さげに思えるのですが、いざ使ってみるとこれが結構微妙。

というのも、電源ケーブルだけ枝分かれした後が非常に長いせいで、結局机の上がケーブルでゴチャゴチャになってしまったのです。

電源が遠い人にとっては間違いなくありがたいのですが、私の環境ではマイナスに働いてしまいました。

モニター代わりになるのはやっぱり便利

これはCintiq 16に限らず液タブなら当てはまるメリットではありますが、初めての液タブだったのもあって感想に入れずにはいられませんでした。

ノートPCとは別でモニターが欲しかった身としては、実質ペンタブと液晶モニターが同時に手に入ったようで嬉しかったですね。

先述のアンチグレア加工のおかげで目も疲れにくく、イラスト制作以外でもメインモニターとして活躍してもらっています。

2024年時点でのCintiq 16の強みは

このレビュー記事を投稿して以降、HuionやXP-Pen、Gaomonといった競合他社の液タブを何台か使ってきました。

やはり後に出た製品の方が優れている点が多かったのですが、同時にCintiq 16ならではの強みも見えてきました。

傾き検知に強い

下2つの動画は順にHuion Kamvas Pro 16(2.5K)・Cintiq 16の傾き検知をテストしたものです。

前者は角度によって上手く機能していなかったり、機能していても変化に乏しかったりと、とにかく安定しません。「あれ?」と困惑して色々と試行錯誤してしまっています。

京時
京時

上記以外の他社製液タブでも似たような感じでした。

一方のCintiq 16は一発で理想の描画ができており、非常にストレスフリーです。最初に買った液タブがCintiq 16だったのもあって、当時はこのレベルができて普通のものだと思っていました。

16インチでは貴重なVESAマウント対応

VESAマウントがわからない人に簡単に説明すると、モニターアームを取り付けるための穴です。

Cintiq 16を使っていた当時は下の画像のように取り付けていました。液タブを浮かせられるため机の上の自由度が増しますし、使わない時の移動も楽ちんです。

モニターアーム+Cintiq 16

このVESAマウント、実は16インチ帯で対応している液タブが少ないんですよ。

現在私が使用している液タブも対応しておらず、モニターアームにノートパソコンスタンドを取り付ける形で対処しています。

Kamvas 16 Pro 2.5K+モニターアーム
隠れて見えないが、液タブの下に折りたたみスタンドを挟んで厚みと重さを補強している

これで解決しているように思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。

見ていただきたいのが、液タブ下部から飛び出している2本の支え。時々手がぶつかり、引いた線が台無しになってしまいます。

また、ノートパソコンスタンドに置いているだけなので、滑り止めがあってもズレることはありますし、角度を変える時は液タブではなくノートパソコンスタンド側を掴む必要があるため、動かしづらいです。

このように、モニターアームとの相性という面ではCintiq 16の方が優れているんですよね。

最近の16インチ液タブにVESAマウントが付いていないのは、軽量化が進んだためだと思われます。モニターアームは一定の重量がないとアームが下がってくれません

実際、上の画像でもノートパソコンスタンドのほかに折りたたみスタンドを挟んで重量をかさ増しした上で使用しているくらいです。

軽量化は良いことのように捉えられがちですが、明確に恩恵があるのは持ち運びする人くらいだと思います。果たして、16インチの液タブを常日頃持ち歩く人ってどのぐらいいるのでしょうか?

少なくとも私は家の中でしか使わないので、Cintiq 16のように多少重量があってもVESAマウントに対応してくれている方が嬉しいですね。

京時
京時

余談ですが、VESAを使う際はネジ穴の大きさに注意が必要です。モニターアームによってはCintiq 16に合うネジが付属していないことがあります

Wacom Cintiq 16 FHDに関するQ&A

感想で触れていなかった、購入の際に気になるであろう疑問にお答えしていきます。

あくまでも私個人の意見ですが、参考になれば幸いです。

視差は実際どのくらいある?

画像を見たほうが分かりやすいかと思いますが、数mm程度の視差があるように見えます。

端にいくほど視差が大きくなるものの、お絵描きをするときは内側しか使わないのでほとんど気になりません。

京時
京時

使っていれば自然と慣れるレベルです

遅延は気になる?

ペイントソフトの手ブレ補正やPCに高負荷が掛かった状況以外で、ハッキリと遅延を感じたことはありません。

思い通りに線を引けます。

耐久性はどう?傷付きやすい?

傷の有無
クリック(タップ)で拡大できます

1年半使ってきましたが、今のところ目立つような傷は一つも入っていません。

描いた直後によく目を凝らして見ると筆跡が残っていますが、そのぐらいしないと分からないレベルです。拭けば消えますし。

普通に使っていれば、傷が入って交換が必要になるケースは滅多に起きないかと思います。

京時
京時

力を入れないと描けないという人は筆圧設定を見直したほうがいいかも

単体でお絵描きできるの?

Cintiq 16をはじめ、ほとんどの液タブが単体で使用できません。

液タブだけ持っているというのは、例えるならゲーム機の本体を持っていないのにコントローラーだけ持っているような状態です。

ただし「ほとんど」とあるように、単体で動く液タブは少ないながらも存在します。PCなしで使える液タブについて興味のある方は、ぜひ下の記事も読んでみてください。

持ち運びできる?

一応可能ですが、私は持ち運びたくないです。

タブレット端末と比べて大きく重い上に、ケーブルやノートPCも持ち運ぶ必要があるので、カフェなどで使うには大掛かり過ぎます。

基本的に家の中だけで使うことを考えましょう。

京時
京時

スーツケースを使うような旅行にならギリ検討していい、かも。私の身内が帰省の際に液タブ持ってきていたので…

Cintiq 22とどっちがいい?

大きい画面&ワコムの描き心地を両立したいならCintiq 22値段や省スペース性を重視したいならCintiq 16です。

Cintiq 22はの価格はCintiq 16から大きく跳ね上がり、15万円近くかかります。

この価格になると他社の高級モデルやiPad Proが買えるレベルになるため、わざわざCintiq 22を選ぶ理由がほとんどないんですよね。

また注意してほしいのが、Cintiq 22の解像度はCintiq 16と同じフルHDであるという点です。

解像度そのままでサイズが大きくなるということは、Cintiq 16の画面をそのまま引き伸ばした形となり、画像の粒感・粗さが目立ちやすくなってしまいます。

以上の点を受け入れた上で「Wacom Pro Penの描き心地以外受け付けなくて、大画面でお絵かきしたい。でもCintiq Proは買えない」という方であれば、Cintiq 22を検討してもよいでしょう。

Wacom Oneとどっちがいい?

現行のWacom One 液晶ペンタブレットは12(11.6)インチ13(13.3)インチの2サイズが展開されており、いずれも液タブでは小さめなのでCintiq 16よりも持ち運び向けです。

また、映像出力対応のUSB Type-Cケーブルが使える点はCintiq 16にないメリットで、一部のAndroidデバイスやノートPCで使いたい場合には特に重要な要素となります。

13.3インチのモデルに関してはマルチタッチ対応型となっており、指を使った操作が可能です。価格がCintiq 16とほとんど変わらない点が悩ましいところではありますが……

したがって、どちらがいいかという疑問に対しては以下のような回答になります。

  • Wacom One 12……安さ重視・持ち運ぶなら
  • Wacom One 13 touch……指タッチ重視・持ち運ぶなら
  • Cintiq 16……大きさ重視・家で使うなら

まとめ: 2024年現在もCintiq 16はオススメ?

ここまでCintiq 16のスペックや使用感を解説してきました。

Cintiq 16はワコム製ならではの良質な描き心地そのままに、6~7万円で買えてしまう良コスパが魅力の液タブでした。

現在はというと、優秀な他社製品が増えてきたり、9万円台にまで値上がりしたりといった事情から、手放しにおすすめしづらくなってしまいました。

ただAmazonの大型セールで7万円近くまで値下がりしたことがあったため、そういったタイミングを狙うなら今でも選択肢の一つとなり得るでしょう。

傾き検知を存分に生かした表現がしたい方、モニターアームに直接取り付けられる16インチの液タブを探している方は、ぜひ検討してみてください。