パソコンの液晶モニターって色々あるけど、イラスト制作に向いてるモニターってどれがいいの?
事務作業するだけならあまりこだわる必要がないモニターですが、イラストやデザインなど、色を扱うクリエイターなら注意して選ばなければなりません。
こんにちは、絵描きの京時ロメ(@kyotoki_OX)です。
本記事では、モニターを選ぶ時に重要な要素の解説や、イラスト制作向けモニターのおすすめ紹介をしていきます。
モニター選びの基準をしっかりおさえて、自分にマッチするモニターを見つけましょう。
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イラスト制作向けモニターの選び方
モニター選びをする時に見ておきたい項目を8つ解説します。
イラスト制作に適したモニターがどんなものか、ここで確認しておきましょう。
解像度
解像度は、画面の表示に使われている画素(色の粒)の密度です。解像度が高ければ高いほど画質がなめらかでキレイになります。
となると4K(3840px × 2160px)以上が理想になるのですが、やはり値段の高さが課題。
コスト重視ならフルHD(1920px × 1080px)を、予算に余裕があるならWQHD(2560px × 1440px)以上をおすすめします。
エントリー向けの液タブがフルHDのモニターを採用していることから分かるように、実際はそれだけの解像度でも十分です。
そもそも4KだとPCの性能によっては動作が重くなる可能性もあるため、古いPCを使っているならWQHD(2560px × 1440px)までにとどめておくのが無難でしょう。
……まぁ、その場合はモニターよりも先にマトモなPCを用意すべきですけどね。
サイズ
モニターのサイズは解像度とのバランスで考えるようにしましょう。
サイズに対して解像度が低いと画面の粗さが目立ってしまい、逆に高すぎると文字が細かくて見づらくなってしまいます。
イラスト制作においてはできるだけキャンバスを正確に視認できる状態が望ましく、大画面&低解像度の粗さが目立つモニターは避けたいところです。
解像度が高すぎても設定から表示を拡大できるので、そこまで大きな問題ではありません
一般的にフルHDは24インチ、WQHDは27インチ、4Kは32インチがちょうどよいとされていることから、これを基準にサイズ・解像度のバランスを見ると良いでしょう。
また、
- 置けるだけのスペースがあるか
- モニターまでの距離は適切か
といった点にも注意が必要です。
大きい画面を近距離で使うと、視線・首の動きが大きくなって疲れやすくなります。
駆動方式(パネル)
駆動方式という言葉から難しそうなイメージを持つかもしれませんが、モニターの作りに種類があるとだけ覚えておけばOKです。
TN方式、VA方式、IPS方式の3種類に大別でき、それぞれ向き・不向きがあります。
表を見ると分かる通り、発色を重視するグラフィック系の用途に向いているのはIPS方式のモニターとなります。
どうしてもTN方式やVA方式の安いモニターを選びたくなりますが、買うとしてもサブモニターとしての使用にとどめておいたほうがよいでしょう。
色再現度が悪いと、モニターから見える色と実際の作品の色とで大きくズレてしまいます。
色域
色域は、モニターが表現できる色の範囲です。
色域には『sRGB』や『AdobeRGB』などの様々な規格が定められており、それぞれで表現できる色空間(RGB、CMYKなど)の範囲が異なります。
例えばsRGBのカバー率が100%なら、その機器はsRGBで定められている範囲の色をすべて表現できることを意味します
Webで作品の投稿・共有を行うのが目的ならば、広く用いられている『sRGB』規格を99%以上カバーしたモニターを選びましょう。
ちなみに一部のApple製品などでは『Display P3』という、sRGBよりも約25%広い色をカバーした色域が採用されています。
これは『DCI-P3』というデジタルシネマ(映画館向け)の規格を、一般的なモニター向けにしたものです。
Apple製品を抜きにしてもDCI-P3相当をカバーする広色域のデバイスは増えてきているので、将来性という面でもDCI-P3(Display P3)に対応しているならそれがベターでしょう。
また仕事上イラストを印刷して使うようなことがある場合は、プリンターの再現可能な色域にも気をつける必要があります。
特に高品質なプリンターで印刷するなら『AdobeRGB』もカバーしているモニターがおすすめです(参照元: Adobe RGBとsRGB、用途に合った色域のモニター選び)。
表示色
表示色とは、モニターが表現できる色の数のことです。
…ん?色域と何が違うの?
と思った方もいることでしょう。
色域のカバー率が表現できる色の範囲なら、表示色はその範囲にいくつの色があると区別できるかを示しています。
例えば、色域がピッタリsRGBと一致していて表示色が1677万色のモニターだったら、sRGBの範囲を1677万通りの色だとみなすのです。
表示色が多いほど細かな色の違いを表現できるため、グラデーションがより滑らかに見えます。
ただイラスト制作用で考えるなら、広く採用されているフルカラー(約1677万色、8bit駆動)のモニターで十分です。
10億色(10bitカラー)対応のモニターを持っていても、モニター以外の機器や取り扱うデータが10億色に対応しておらず、表示色の多さを生かせないことがあります。
作品を閲覧する人たちも同様で、一般的なモニターがフルカラーなのに、わざわざ10億色対応の環境を想定して作品制作するのは割に合わないのです。
ちなみにペイントソフト『CLIP STUDIO PAINT』や『アイビスペイント』は執筆時点だと10億色に非対応です。10億色対応のモニターでもフルカラーを扱うことになります。
ただこれはコスパを考えた場合の意見なので、予算に余裕があるなら写真・動画編集用や観賞用として、10億色対応のモニターを選ぶのは全然アリだと思います。
色精度
正確な色になるようモニターを調整する作業を『カラーキャリブレーション』といい、出荷前にキャリブレーションを行っている製品は、届いてすぐに使えます。
より確実性を取るなら、色精度に関するテストを合格した証明である『Calman Verified』認証などを取得している製品を選ぶとよいでしょう。
またキャリブレーション機能が搭載されている製品なら、モニターの経年劣化で再度キャリブレーションが必要になった際に重宝するのでおすすめです。
他にも製品の色精度を知るための数値として『色差ΔE』の表記も覚えておくと良いでしょう。
これは基準となる色とモニターに表示された色の差を数値化したもので、0に近いほど精度が高いことを表しています。
以上のような色精度に関する表記・機能がある製品なら、イラスト制作用としての適性が高いです。
光沢
モニターパネルの反射のしやすさに影響する要素です。
グレア(光沢)とノングレア(非光沢)の2種類があり、前者は見栄えが良いですが反射・映り込みしやすく、後者は見栄えは劣る代わりに反射・映り込みしづらいのが特徴です。
グレアパネルの方が映りがキレイで鑑賞には向いていますが、長時間の作業でも疲れにくいノングレアのモニターをおすすめします。
光沢パネルは疲れやすさもそうですが、イラスト制作では映り込みも致命的だった記憶があります
入力端子
デバイスからモニターに映像を送るケーブルにも様々な種類があります。
自分が所持しているパソコンと同じ端子を持っているモニターを選んでください。
相当古いパソコンでない限りは、HDMI端子のあるモニターを選んでおけば大丈夫な場合が多いですね
最近のノートパソコンはUSB Type-Cから映像出力できる場合が多いので、もしパソコンの入力端子が足りない・見つからない場合などはそちらで対応していないか確認してみましょう。
USBの仕様欄の「DP Alternate Mode(オルタネートモード)」「Alt Mode」といった記載が目印です。
USBケーブルに関しても映像出力対応のものを必ず使いましょう。
イラスト用モニターの選び方まとめ
ここまで解説したモニターの選び方をまとめます。
イラスト制作向けのモニターのおすすめ基準は以下の通りです。
解像度 | フルHD(1920×1280)以上 |
サイズの目安 | フルHD…24インチまで WQHD…27インチまで 4K…32インチまで ※置き場所に注意 |
駆動方式 | IPS方式 |
色域 | 最低でもRGBカバー率99・100% 余裕があればDCI-P3(Display P3) 高品質な印刷にはAdobeRGB |
表示色 | フルカラー(約1677万色、8bit駆動)以上 |
色精度の表記 | キャリブレーション・認証・色差 などが表記されていると好ましい |
光沢 | アンチグレア(非光沢) |
接続端子 | 接続したいデバイスに対応したものを |
モニターによってはスタンドの有無や目の疲労を抑える機能(フリッカーフリー※、ブルーライトカット)などの特徴があるので、そのあたりも考慮しながら自分に最適な商品を見つけてみて下さい。
※フリッカーフリー……モニターのちらつきを防ぎ目の疲れを軽減させる
プロのイラストレーターが使っているモニター紹介
個人的に読んだり見ていたりしていた書籍やYouTubeから、プロ絵師の作業環境を引用という形で紹介します。
EIZO製のモニターの使用率が高いのは予想通りでしたが、FlexScanシリーズを使っている方が多いのは意外な発見でした。
ただ、いくらEIZOとはいえFlexScanシリーズはビジネス向けモニターなので、ColorEdgeシリーズや他社のクリエイター向けモニターを優先した方がいいと思います。
lack さん
EIZO FlexScan EV2736W-ZBK
EIZO ColorEdge CS2730
それぞれの用途は本に記載されていませんでしたが、おそらくFlexScanの方が資料確認用で、ColorEdgeで色味を確認しているのでしょう。
2枚ともEIZO製で揃えているところに、仕事道具には投資を惜しまないプロならではの姿勢を感じます。
カオミン さん
IODATA 23.8インチ GigaCrysta
IODATA 27インチ GigaCrysta
IODATAのGigaCrystaシリーズはゲーミングモニターであって、クリエイター向けではありません。
というのも、カオミンさんはiPad Proでお絵かきをしているとのことで、PCとモニターはあくまでも資料確認用だそうです。
iPad自体が色味確認用のモニターとしての役割を兼ねているということですね。
どうしま さん
EIZO FlexScan EV2451(色味確認用)
Diamondcrysta WIDE RDT223WLM(サブモニター)
どうしまさんが使われているモニターについて調べてみたところ、EIZOの方が2016年製のFlexScanで、Diamondcrystaは2013年製の三菱電機が作ったモニターでした。
EIZOのモニターは他社より長い5年保証なのですが、その期間を大きく過ぎても使えているところに品質の高さを感じます。
以上の3名の方については↓の本から引用しました。
さいとうなおき さん
こちらの動画の冒頭にて、使用しているモニターについて言及されていました。
さいとうなおきさんもまたまたEIZO製です。イラストレーターさんたちのEIZO製モニターへの信頼は相当なものですね。
焼まゆる さん
・Benq SW2700PT(色味確認用)
・Asus Designo MX239H(サブモニター)
焼まゆるさんは納品物の最終確認用に、Benq SW2700PTというクリエイター向けモニターを使用しているとのことです。
遮光フードが付いているので、照明器具などからの光が映り込まないようになっています。
Benq製はEIZOよりもコスパ寄りなため、限られた予算でクリエイター向けモニターを買いたい方におすすめです。
イラスト制作におすすめのモニター
クリエイター向けモニターの分野で主要なメーカーから、おすすめのモニターをピックアップしました。
比較的安価で買えるものからプロ仕様のものまで幅広く紹介していきますので、ぜひモニター選びの参考にしてみてください。
1: ASUS ProArt PA248QV
(出典: Amazon)
クリエイター向けとして必要なスペックを満たしながらも3万円で買える高コスパが魅力。画面は19:10と、フルHDと比べて少しだけ縦に広くなっています。
価格(Amazon調べ) | 28,618円 |
サイズ | 24.1インチ |
解像度 | WUXGA(1920×1200) |
色域 | sRGB 100%, Rec.709 100% |
表示色 | 約1677万色 |
駆動方式 | IPS方式 |
光沢 | アンチグレア(非光沢) |
入力端子 | VGA / Display Port / HDMI |
保証 | 3年保証・3年無輝点交換保証 |
特徴 | 色精度 ΔE<2 CalMAN認証取得 USBハブ |
2: Benq AQCOLOR PD2705Q
(出典: Amazon)
クリエイター向けを多数展開しているBenq製のモニターです。5万円台で色精度の高いWQHDモニターを狙うなら候補に
価格(Amazon調べ) | 57,045円 |
サイズ | 27インチ |
解像度 | WQHD(2560×1440) |
色域 | sRGB 100%, Rec.709 100% |
表示色 | 約1677万色 |
駆動方式 | IPS方式 |
光沢 | アンチグレア(非光沢) |
入力端子 | USB Type-C(Alt mode) / Display Port / HDMI |
保証 | 3年保証 |
特徴 | 色精度 ΔE≦3 Pantoneカラー・CalMAN認証取得 KVMスイッチ(2台のPCの映像を1つの画面に表示) USBハブ HDR10対応 |
3: EIZO ColorEdge CS2400S
(出典: Amazon)
国産の高級モニターメーカー「EIZO」の、比較的安価な部類のカラーマネジメントモニターです。独自の表示ムラ補正や1台ごとに行われる調整により、安定して高い品質を誇ります。
価格(Amazon調べ) | 81,291円 |
サイズ | 24.1インチ |
解像度 | WUXGA(1920×1200) |
色域 | AdobeRGB 99% |
表示色 | 約10.7億色 |
駆動方式 | IPS方式 |
光沢 | アンチグレア(非光沢) |
入力端子 | USB Type-C(Alt mode) / Display Port / HDMI |
保証 | 5年保証・無輝点交換保証(半年以内) |
特徴 | 輝度・色度ムラ補正機能 ハードウェア・キャリブレーション対応 USBハブ |
4: ViewSonic VP2786-4K
(出典: Amazon)
ViewSonicは米国発のれっきとしたモニターブランドです。4Kのカラーマネジメントモニターでは比較的高コスパで、これ1つ買えば十分と言えるほどに機能・付属品が充実しています
価格(Amazon調べ) | 129,800円 |
サイズ | 27インチ |
解像度 | 4K(3840×2160) |
色域 | Adobe RGB 100%, DCI-P3 98% |
表示色 | 約10.7億色 |
駆動方式 | IPS方式 |
光沢 | アンチグレア(非光沢) |
入力端子 | USB Type-C(Alt mode) / Display Port / HDMI |
保証 | 3年保証(液晶パネル・バックライト含む) |
特徴 | 色精度 ΔE<2 Fogra認証・Idealliance認証取得 ColorPro ホイール(色調整コントローラー)付き 内蔵キャリブレーション搭載 背面デスクトップ照明内蔵 遮光フード付き HDR10対応 USBハブ |
※購入の際はパソコンが4Kで出力可能か必ずご確認ください。
5: Dell 4K カラーマネジメントモニター UP2720Q
(出典: Amazon)
世界No.1のモニターブランドを謳うDellのカラーマネジメントモニターです。クリエイター向けのU・UPシリーズである「UP2720Q」にはThunderbolt端子が搭載されており、一般的なUSBよりも高速なデータ転送が可能です。
価格(Amazon調べ) | 150,960円 |
サイズ | 27インチ |
解像度 | 4K(3840×2160) |
色域 | AdobeRGB 100%, DCI-P3 98%, BT.2020 80% |
表示色 | 約10.7億色 |
駆動方式 | IPS方式 |
光沢 | アンチグレア(非光沢) |
入力端子 | Display Port / HDMI×2 / Thunderbolt 3 |
保証 | 3年間無輝点交換保証 |
特徴 | 色精度 ΔE<2(ユーザーガイド参照) CalMANソフトウェア対応 内蔵キャリブレーション(測色計)搭載 遮光フード付き USBハブ 良品先出しサービス(修理時は交換品が先に届く) |
※購入の際はパソコンが4Kで出力可能か必ずご確認ください。