2022年発売の液タブKamvas Pro 16(2.5K)を実機レビューしていきます。
筆者は以前にKamvas 16(2021)をレビューしたことがあったのですが、性能に不足がなく使いやすかったのでレビュー後もメイン機として愛用していました。
今回のKamvas Proシリーズはその上位モデルということなのですが、特に液晶ディスプレイの性能が大きくアップしています。
また液タブ本体がより洗練されたデザインに進化したほか、内容物に2種類の替え芯が付属するなど、まさに
値段が高すぎない範囲で高性能な液タブがほしい!
という人にピッタリな製品となっていました。
良かった点はもちろん、使っていて気になった点も紹介していきますので、興味のある方はぜひ参考にしていただけたら幸いです。
基本スペック
平均的な液タブよりも高性能です。
上の表では優れている箇所を赤文字で強調してあるのですが、精度や反応速度、ディスプレイの性能が同価格帯の液タブと比べて一歩リードしています。
このスペックの液タブが6万円台、しかもスタンドまで付属しているのですから、お世辞抜きにしてもとんでもないコスパです。
外観・開封レビュー
ここからは開封時の様子を写真で紹介します。
今回提供いただいたのは日本限定版なので、箱のデザインや内容物が特別仕様になっていました。
日本限定版の特典3つがこちら。クリアファイルとしおり、ウィッシュリストポスターになります。
特典以外の内容物をひと通り並べた画像はこちら。
本体やペン、ケーブル類のほか、折りたたみ式スタンド、グローブ、クリーニングクロスなども付属していました。
内容物について特に不満はないですし、むしろ替え芯2種やスタンドも付属しているなど充実しています。
内容物を紹介したところで、次は本体の外観を見ていきましょう。
他の液タブと比べて画面周辺のスペースが狭くなっておりスマートな印象を受けました。
裏面は上品な質感のシルバーカラー。上部は小さな段になっていますが、机の上に置いても不安定さは感じませんでした。
保護シートを剥がした際にシール痕が残るのが気になりました。
一応拭き取れましたが、これはぜひとも改善してほしいところです。
サイズは13.3型のノートパソコンよりひと回り大きいです。
家での使用がメインになるサイズで、外に持ち出すなら大きめのバッグが必要になると思われます。
厚さに関しては1~1.1cmと驚異的な薄さ。これが功を奏しているのか重量も1.28kgにまで抑えられ、16インチ帯の液タブとしては持ち運びしやすくなっています。
付属のスタンドも合わせて紹介しておきましょう。
せっかくなのでKamvas 16(2021)の付属スタンドと並べて撮ってみました。
左がKamvas 16(2021)、右がKamvas Pro 16(2.5K)の付属スタンドです。
Kamvas Pro 16(2.5K)の付属スタンドの方が一回りサイズが大きくなっており、安定性が向上しています。
ただし横幅・奥行が少しだけ長くなっているため、机の上が狭い人は注意が必要です。
組立てやすさ・コンパクトさはKamvas 16(2021)のスタンド、安定性はKamvas Pro 16(2.5K)のスタンドという印象でした。
接続・初期設定
Kamvas Pro 16(2.5K)をPCで使うにあたって、必要な作業を紹介します。
Kamvas Pro 16(2.5K)の接続方法
本製品の接続方法は「3 in 2ケーブルで接続する」「USB Type-Cケーブルで接続する」の2つです。
それぞれどのような違いがあるのか軽く解説します。
3 in 2ケーブルで接続する
映像出力のためのHDMIケーブルとペン入力のためのUSBケーブル、電力供給のためのUSBケーブルを使って接続する昔ながらの方法です。
給電用のUSBケーブルはPCに挿してもいいですし、付属の電源アダプターを使ってコンセントから給電しても構いません。
AndroidデバイスにはHDMIポートがないため、このケーブルはPCとの接続用という認識で大丈夫です。
USB Type-C ケーブルで接続する
「映像出力可能な」USB Type Cポートを備えたPC・Androidデバイスで可能な新しい接続方法です。
1本のケーブルで接続するため、3 in 2ケーブルと比べてつなぐのが簡単 & 見た目がスッキリするといったメリットがあります。
もしこの接続方法で液タブの動作が不安定になる人は、USB Type C ケーブルからの電力供給が足りてないのかもしれません。電源用のUSBケーブルを含めた2本で接続するようにしましょう。
ドライバーのインストール
PCで使うには、Huionの公式サイトからドライバーをダウンロード、インストールする必要があります。
Androidで使う人は関係ないので飛ばしてOKです。
- STEP 1公式ページから製品名を選択してドライバーをダウンロード
- STEP 2
- STEP 3
必要最低限の初期設定(2画面以上の人)
液タブの画面を含めて2画面以上で表示している場合、インストール直後だと作業領域が液タブ以外のモニターに割り当てられていることがあります。
そのままだと液タブの画面をペンで操作できないため、必ず上記の画像のように液タブの画面と作業領域が一致しているか確認しておきましょう。
OSDメニュー
Kamvas Pro 16(2.5K)は電源ボタンを長押ししてOSDメニューを表示させます。
普通の液タブやモニターならボタンをポチポチしなくてはならず面倒なのですが……この製品、なんとペンで操作ができちゃうので非常に快適です。
OSDメニューの画面はこちら。
下部にある4つのボタン(左から「明るさ」「色温度」「色域」「一般設定」)をタッチして設定項目を切り替えることができます。
初見だとアイコンだけで分かりにくいため、素直にマニュアルを読みながら設定するのが無難です。
ついでですが、筆者が行った設定も紹介しておきましょう。
(すみません、カメラ越しなせいか実際の画面より色褪せた感じになってます)
デフォルトだと少し暗いように感じたのでカスタム設定で明るさを50→60にしました。
色温度は後々色域を設定した際に固定されるためノータッチで。
色域は「Native」のままの方が映りがキレイで良いのですが、Web投稿を想定してイラスト制作をするので「sRGB」に設定しました。
というのもデフォルトだと一般のデバイスよりも多くの色が見える状態で作品制作することになります。
鑑賞するのが自分だけなら問題ないのですが、Webなどに投稿・公開するなら相手側の環境に合わせなくてはなりません。
多くのデバイスで採用されているsRGBに制限することによって、どんなデバイスで見ていても作品を意図した通りに届けられるようにします。
この液タブだと〇〇色が見えてたのにスマホだと全然見えない!なんてことがあるともったいないですよね。
描き心地のレビュー
傾き検知にクセがあったものの、握りやすさや視差も特に不満はなく総合的には使いやすいペンという評価です。
特に優秀だったのがペン先の高い安定性で、沈み込みが小さく横方向へのブレも少ないため、とてもスムーズに描けます。
ペンの握りやすさ
Kamvas 16(2021)と同じペンなので2回目のレビューになるのですが、変わらず不満のない使い心地です。
重量自体がそこまで重くないのに加えペン先側に重心が偏っているので、長時間持ってても疲れにくいように感じます。
ボタンの押し心地については、これまでレビューしたペンと比べて硬くもなく柔らかくもないといった具合。
指がボタンに乗っている & 手に力が入ってるといった特殊な場合を除けば、誤操作の心配はありません。
ペン先の沈み込み
ペン先の沈み込みは描いてる最中だと気づかないレベルで小さいです。
色んなペンタブ・液タブをレビューしてきましたが、このペンの沈み込みの小ささは他社製を含めた中でもトップクラスと言っても過言ではありません。
また、ペン先がカチャカチャとぶれない点も非常に気に入っています。
傾き検知の性能
傾き検知は、クセがあるものの十分に使えるレベルでした。
というのも、動画でお見せしたようにペンの傾ける方向によって傾き検知の効き方に違いがあります。
液タブの画面に対して斜め方向に傾けて描くと傾き検知が効きづらいのですが、縦・横向きに傾けて描くと正常に機能するのです。
理想はもちろんどんな方向に傾けても同じように傾き検知が働くことですが、傾き検知がほとんど使い物にならない機種もあることを考えると、使えるだけ良いのかもしれません。
視差(中央と端)
Huionの設定ソフトでキャリブレーションを行った上で撮影しました。
他の液タブと同様、端に寄れば寄るほどペン先とカーソルのずれは大きくなりますが、操作していてストレスを感じるレベルではありません。
標準ペン先とフェルトペン先
標準ペン先ではツルツル寄りな感触でしたが、フェルトペン先だとサラサラといった感触になり、程よい摩擦が得られました。
そのためアナログな描き心地を求めるなら標準ペン先よりもフェルトペン先の方が良いかと思います。
ペーパーライクフィルムを買う方もいらっしゃるかもしれませんが、その前にフェルトペン先を試してみてからでもいいかもしれません。
ディスプレイのレビュー
ディスプレイ表面は他の液タブとほぼ同じような質感です。
スマホ・タブレットの画面と比べると摩擦が大きく、変に滑るようなことがありません。
液タブ本体の熱については全く問題なし。というのも接続部がショートカットキー側についており、手を触れる液晶画面側が熱くならないためです。
念のため長時間使用後に接続部付近を触ってみましたが、体温くらいの暖かさで熱いとは感じませんでした。
ディスプレイの発色チェック
注意点ですが、色の表現や正確性については専用の測定機材を持っていないのであくまでも目測となります。
鵜呑みにはせず参考程度に留めておいてください。
液晶ディスプレイのメーカーであるEIZOさんの記事を参考に表示チェックを行いました。
カラーと白黒の2つのパターン画像を表示した結果が下の通り。区別できる色が多いほど表示品質が高いということになります。
sRGB設定だと高彩度の色がNative設定と比べて褪せているように見えますね。
ただ、Native設定よりも少しだけ各色の区別がしやすくなった気がします。
比較参考用に以前レビューしたKamvas 16(2021)の表示チェックもご紹介しましょう。
Kamvas 16(2021)は色域設定がないためsRGB120%のままでの表示になりますが、Kamvas Pro 16(2.5K)Native設定に近い印象です。
筆者の感覚では、左下の暗い色はKamvas 16(2021)の方が、高彩度の色はKamvas Pro 16(2.5K)Native設定の方が区別しやすいように見えます。
またKamvas Pro 16(2.5K)とKamvas 16(2021)とでモノクロ画像を見比べると、Kamvas Pro 16(2.5K)の方がグラデーションに滑らかさがあり、ムラが少ないように感じました。
フルHDとの比較
せっかく同じサイズのフルHD液タブが手元にあるので、QHDの本製品と並べてどんな違いがあるのか比較してみました。
どちらもWindows側設定の表示倍率100%、かつ1000×1000pxのキャンバスを表示倍率100%にしたクリスタの画面を並べて撮影しました。
画像の通り、フルHDと比べて全体的に細かくなった=多くの情報が一度に表示できるようになっています。
さらに参考として、フルHDのKamvas 16(2021)からQHDのKamvas Pro 16(2.5K)に乗り換えた直後のスクショもお見せします。
クリスタの色混ぜパレット(赤枠内右下)やTourBoxのHUDメニュー(十字型のアイコン)の位置がKamvas 16(2021)を使っていた頃のままになっており、QHDへ変わったことによる画面の広がりを実感できました。
表示倍率を小さくすればフルHDでも似たような画面にできるのでは?
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、Windowsの表示倍率設定は100%以上にはできても100%未満には設定できません。
また仮に出来たとしても画面のきめ細やかさに差があるため、表示が霞んだり粗くなったりと、メリットよりもデメリットの方が大きくなってしまいます。
ちなみにQHDよりも解像度の高い4Kの液タブが存在しますが、相応のマシンスペックが求められるほか、画面が細かくなりすぎて表示倍率を変更しないと見づらい可能性がありますし、何より高価です。
4K版Kamvas Pro 16は9万円台…!
そのため、使いやすさの面でもコスパの面でも16インチの液タブにはQHDの解像度が最適であるように思います。
まとめ: Kamvas Pro 16(2.5K)はどんな人におすすめ?
以上、Kamvas Pro 16(2.5K)のレビューでした。
良かった点・気になった点をまとめます。
W社のエントリー向け16インチ液タブと同じ価格帯でありながら、より本格的な液タブが買えるというだけでも十分価値がある製品です。
加えて折りたたみ式スタンド、フェルトペン先といった付属品が充実している点もコスパの良さに拍車をかけています。
現在販売されている標準的な液タブと比べてワンランク上の性能を備えているため、長い間頼れるメイン機として活躍してくれることでしょう。
特に予算5万円くらいで液タブを検討していた方なら、ほんの少しだけ背伸びして本製品を手にとってみることをおすすめします。