片手デバイスは、一度使い慣れさえすればクリエイティブ作業が快適になるアイテムです。
私自身もキーボードだけでのイラスト制作にはもう戻れなくなっています。
現状でも十分快適であるにも関わらず他のも試してみたいと思い、CLIP STUDIO TABMATE(以下、タブメイト)を自腹で購入して使ってみることにしました。
本記事では、使ってみて感じたタブメイトのメリット・デメリットなどをレビューしていきます。
まず簡単に感想を述べますと、名前に「CLIP STUDIO」とあるように、この製品は同社のペイントソフト「CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)」を利用するかどうかでおすすめ度が大きく変わると思いました。
片手デバイスが初めてのクリスタユーザーなら、利便性と価格両方の面で間違いなく購入候補となり得るでしょう。
詳細は本文にて話しますので、興味のある方はぜひ最後までお付き合いください。
仕様・外観レビュー
メーカー名 | セルシス |
製品名 | CLIP STUDIO TABMATE |
価格(公式ストア) | 通常価格: 7,000円 優待価格: 4,900円 |
寸法 | (縦)11.7cm × (横)2.5~3.4cm × (奥行)2.8~4.4cm |
ボタン数 | 14(ホイール・方向パッド・A・B・C・D・+・- ・Q・トリガー・CLIP STUDIOボタン) |
接続方法 | 無線(Bluetooth 3.0 class2) |
電源 | 単三電池 ×1 |
内容物 | ・コントローラー本体 ×1 ・CLIP STUDIO PAINT DEBUT Ver.1 for Windows / macOS ダウンロード版シリアルナンバー ×1 ・単三電池(動作確認用) ×1 ・ご案内/保証書(紙) ×1 |
対応環境 | 【共通】Bluetooth接続対応であること Windows 8.1 64bit , Windows 10 64bit , Windows 11 64bit macOS 10.14 , 10.15 , 11 , 12 , 13 Android 9以降 |
Bluetoothは3.0と、古めの規格である点が未購入の人にとっては気になるかもしれません。私自身、購入する前は
5.0以降が主流の中でまだ3.0なのか…
と思いましたね。
実はニンテンドースイッチのコントローラー(以下、ジョイコン)も同じく3.0であるように、そこまで致命的な欠点ではありません。ただ、本当に問題ないかは使ってみるまで分からないものです。
今でこそ大丈夫だと確信できていますが、もし改良版が出るなら、実性能面でも印象面でもBluetoothのバージョンアップは優先して行うべきだと思います。
また有線接続はできないため、電池切れには注意しなければなりません。いつでも交換できるように乾電池のストックは用意しておきたいです。
動作環境に関しては、嬉しいことにAndroidデバイスも含まれています。スマホ・タブレット版のクリスタではスタジオモード時に利用できるとのことです。
一方でiPhoneやiPadには残念ながら正式対応していません。Bluetooth自体はこれらの機器にも備わっているので使えそうですが…おそらくMFi(Made For iPhone/iPad)認証が障壁となっていると思われます。
見た目は値段相応でプラスチック感が強く、お世辞にも高級感があるとは言い難いです。
ただ他人に見せびらかすものでもないので特に不満はありません。ホイール部分にも安っぽさが出ていますが作り自体は良好で、横へのガタツキが少ない点も良かったです。
デバイスの形状は左右対象になっており、右利きでも問題なく使用できることも高く評価できます。
初期設定(セットアップ)のレビュー
タブメイトの初期設定はドライバーが不要な分、かなりシンプルです。
PC(Windows11)とスマホ(Android)それぞれの接続手順は以下の通り。OSのバージョンやデバイスによって多少異なる点がありますが、基本的な流れは一緒です。
- STEP1タブメイトのCLIP STUDIOボタンを長押し
これがCLIP STUDIOボタン タブメイトのランプが赤・青交互に点滅している状態にします。
- STEP2設定の「Bluetoothとデバイス」からタブメイトを追加
タップ(クリック)で拡大 「デバイスの追加」→「Bluetooth」→「TABMATE」を選択。無事接続が完了したら使用できるようになります。
- STEP1タブメイトのCLIP STUDIOボタンを長押し
こちらも同様に、ランプが赤・青交互に点滅している状態にします。
- STEP2Androidの設定を開き、「接続設定」へ進む
- STEP3「新しいデバイスとペア設定」へと進み、タブメイトを追加
使用可能なデバイスの欄に表示される「TABMATE」を選択すれば接続完了です。「TABMATEをペアに設定しますか?」というウィンドウが出た場合は、「ペア設定する」を選択してください。
タブメイトで最低限必要な初期設定はこれだけ。接続が完了すれば、すぐにクリスタを開いて使い始められます。
操作の割り当てについては、クリスタ内の「CLIP STUDIO TABMATE設定」から確認できます。
↓PC版
↓スマホ版
片手デバイスは使い始めの登録作業が非常に面倒なので、この点だけでタブメイトの評価が大きく上がりましたね。
私の使っているTourboxはWeb上から各ソフト用の設定データをダウンロードできるのですが、あくまでもユーザーが作成したものなので、各人の制作スタイルが強く反映されてしまうのがネックでした。
その点、タブメイトの初期設定は汎用性の高い操作だけが登録されているため、そのままでも十分快適に使えました。
これだけ簡単に使い始められるのなら、片手デバイスが初めての人やPCの扱いに自信がない人にも強くおすすめできます。
ただしクリスタ以外で使う際は、他のデバイスと同様に「JoytoKey」などの割り当てソフトが必要になる点は注意しましょう。
タブメイトを使ってみての感想
ここからは実際にお絵かきに使ってみた感想を話していきます。もちろん使用したソフトはCLIP STUDIO PAINT EX です。
今のところ、Tourbox Eliteとどちらをメインで使うか悩むくらいには気に入っています。どっちも捨てがたいので、一緒に使えないか試しているところです。
タブメイトは手に持って、Tourboxは机に置いて使うので共存できると思うんですよね
何が気に入ったかというと、まず使っていて手指が楽なところですね。電源・モード(割り当て)切り替え用のCLIP STUDIOボタン以外は本体の奥側にボタンが集まっており、指を大きく動かさなくても登録している操作全てにアクセスできます。
ボタンの形状も様々で、指から伝わる感触だけで何のボタンか分かるようになっている点も良かったです。
加えてハンディタイプの片手デバイスなので片腕を自由に動かすことができ、作業中の姿勢に融通がきくようになりました。不安だった無線通信の安定性も良好で、作業の妨げになるような不満点は今のところ無いですね。
ホイールが便利
お絵かきをしているときの利き手はペンを握りっぱなしで、基本的にマウスへ持ち替えることはありません(ないよね?)。
ですがタブメイトにはホイールが搭載されているため、実質ペンを握ったままマウスのホイールが使えてしまいます。
私の場合は初期プリセットから変更せずズームを割り当てていますが、やはりキーボードで操作するよりもずっと直感的で使いやすいです。
もちろん押し込みも可能で、初期プリセットではズームと相性の良い「キャンバスの全体表示」が割り当てられています。
このように関連した操作をひとまとめにできるという点も、覚えやすさや操作のしやすさに貢献していると言えるでしょう。
腕が自由に動かせて楽
ハンディタイプ全般のメリットではありますが、片腕がいつでも自由に動かせる点はやはり魅力的です。
極端な話、タブメイトを持った腕をブンブン振り回しながらでも作業できます。
…と言いつつ実際に振り回すことはなかったのですが、膝や肘掛けの上に腕を乗せたまま操作できるというだけでかなり快適だと感じました。
再接続までが早い
間に余計なドライバー・ソフトを挟まないので、電源を入れてPCと接続したらすぐに使える点が非常に良かったです。
例えば私が使っているTourboxというデバイスは独自の設定ソフトが必要なのですが、PCに接続した上で設定ソフトに認識されなければならないため、その分の時間がかかってしまいます。
また、その過程で発生するようなトラブル・不具合の心配がない点もタブメイトの良いところですね。
設定ソフトにPCのリソースを割かれない
「JoytoKey」のような割り当てソフトやデバイス独自の設定ソフトは常に起動している必要があるため、PCのメモリなどを使われてしまいます。
タブメイトの設定はクリスタ内で完結しているので、ペイントソフト以外に余計なリソースを割かれません。
通信が安定している
Bluetooth 3.0というのを見て不安でしたが、「今のところは」気にすることなく使えています。
先程も述べように、ニンテンドースイッチのコントローラーも同じBluetooth 3.0であることを考えると、入力デバイス程度の通信量ならこれで十分ということなのでしょうか。
お絵かき用のデバイスにeスポーツレベルの低遅延を求めているわけではないですし、このまま安定し続けてくれれば文句は無いですね。
初期設定が使いやすい
最初から登録されている割り当ては汎用性が高く、設定不要ですぐに使えるという強みがしっかり生かされているように感じました。
初期設定にはクイックアクセスも割り当てられており、ツールや機能をまとめて管理するのに便利です。
直接タブメイトのボタンに登録しておいた方が、クイックアクセスを経由するよりも早く操作できるのでは?
と思った方もいることでしょう。
確かにそうですが、タブメイトのボタンは無限にあるわけではなく、なんでもかんでも登録するのは不可能ですよね。
限られた場面で使うようなツール・機能をクイックアクセスに詰め込むようにすれば、多くの操作を可能にしつつ、頻繁に使う操作だけをボタンに割り当てられるようになります。
またクイックアクセスならボタン1つでアクセスできるため、覚える負担も軽く、押し間違いも発生しづらいです。
加えて、タブメイトの設定をいじるよりもクイックアクセスで追加・削除する方がずっと手軽にできるので、利用しない手はありません。
感触だけでボタンを判別しやすい
ボタンの形状や位置関係から自分がどのボタンに触れているのか、直接見なくても判別しやすい点が良かったです。
前面についている2つのボタンも片方だけに突起が付いていて、押し間違いを防ぐ工夫がされていました。
トリガーが押しづらい
ここからはマイナスポイントについて話していきます。
トリガーが手前の深い位置にあって、自分の手では少し押しづらいように感じました。
下の写真のように、安定感のある持ち方をしようとすると中指の第2関節近くで押す形となってしまいます。
これでは押した時に指から伝わる感覚が弱く、ちゃんと押せているのかどうかが分かりづらいです。
個人的にはゲームのコントローラーのようにもう少し浅い位置にして、第一関節あたりで押せる方が使いやすいかなと思いました。
各モード(割り当て)の使い分けには注意
公式ページによると、タブメイトの初期状態は工程ごとにモードを使い分ける想定になっているのですが、この考え方なら切り替える回数も少なく済むので問題はありません。
ただその考え方から外れて、できるだけ多くの操作を登録するために複数のモードをまたいでしまうと、途端に使いづらくなってしまいます。
例えばキャンバスの操作はモード1、各種ツールへの切り替えはモード2、ブラシの調整関連はモード3…といった具合に、自分が使うであろう操作をひたすら割り当てたようなケースです。
モードの切り替えは、CLIP STUDIOボタンを押すごとに1→2→3→4→1…といった順で切り替わる仕様となっています。そのため目的の操作までに最大3回の切り替えを行った上で、さらにボタンを押さなければなりません。
間違えて目的のモードを通り過ぎてしまった場合は、また同じ回数ボタンを押す羽目に…
こうなってしまっては、もはやキーボードを使った方が早いですよね。私は設定を考えている中でこの問題に気付き、初期のプリセットを少しいじる程度で留めることにしました。
プリセット間を頻繁に移動するような使い方は効率が大きく落ちるため、注意しましょう。
おすすめの設定・使い方
前述したように、モード間を何度も往復するようなツール・操作の割り当て方は推奨しません。
では簡単かつおすすめの設定は何かというと、素直に初期状態で使うことです。変更するにしても、工程ごとにモードを使い分けるという想定は崩さない方がよいでしょう。
私自身もモード1のトリガーをスポイトから消しゴムに変えたぐらいで、それ以外は初期のまま使用しています。
様々なツールをタブメイトで切り替えられるようにしたい場合には、クイックアクセスを活用しましょう。
1つのモードだけで完結させる使い方をしたいなら、クイックアクセスは必須級だと思います
私は使用頻度の高いツールだけを登録して使っているのですが、意外とこれでも不便なく作業できています。
クイックアクセスも目的や用途に応じてセットの作成・切り替えが可能ですし、たまに使うツールに関しては画面のアイコンからで十分です。
まとめ: タブメイトはどんな人におすすめ?
以上、タブメイトのレビューでした。改めてメリット・デメリットをまとめると次の通りとなります。
1万円以内の片手デバイスの中だと、差別点はホイールがあること・ハンディタイプであることくらいで、タブメイト本体のスペックだけで言えば標準的です。
ただ何度も述べているようにクリスタとの親和性がとにかく高く、この特徴に購入理由の8~9割が詰まっていると言っても過言ではありません。
割り当てソフトや独自の設定ソフトが不要、かつBluetooth機器として最低限の初期設定を行うだけで実戦投入できる片手デバイスは、おそらくタブメイトくらいでしょう。
したがって、私がタブメイトをおすすめするのは次のような人です。
クリスタ前提とはいえ、ここまでとっつきやすい片手デバイスは中々ないので、あてはまった方はぜひ検討してみてくださいね。