こんにちは、絵描きの京時ロメ(@kyotoki_OX)です。
今回、Huion様からフラグシップモデルの液タブ『Huion Kamvas Pro 19(GT1902)』を試用できる機会をいただけました。
開封~組立の様子や描き心地、画面の性能を中心にレビューし、良かった部分と気になった部分をまとめています。
本格的な液タブに興味がある方はぜひ読んでいってください。
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Kamvas Pro 19のスペック&仕様
▶つまりこのスペックってどうなの?
当然ですが、平均的な液タブよりも高性能です。
サイズは希少な19インチ(18.4インチ)となっており、22インチでは大きすぎるけど16インチだと物足りないという人のニーズに答えてくれています。
性能面ではペンの精度が優秀なほか、色域のカバー率も最高水準で、Adobe RGB・DCI-P3どちらの表示にも十分に対応できるレベルです。
筆圧検知レベルも最先端の16384段階。従来よりも筆圧の細かい変化を読み取りやすくなっています。
Kamvas Pro 19の開封・組み立てレビュー
まずは外箱から。このくらいのサイズになると片腕で抱えるのが難しくなりますね。
こちらが本体になります。画面外のフチ(ベゼル)が薄くなっており、スタイリッシュです。
裏面はこのようになっています。
中央の4つの穴は75×75サイズのVESAマウントで、モニターアームなどを取り付けるのに使います。
本体を取り出した後、箱から黒い封筒が現れました。
中に入っていたのはキャリブレーションレポート。
工場出荷前に画面の色を正確な色に調整してくれているので、こちら側でわざわざツールやソフトを使わなくても安心して使い始められます。
ケーブルなどの小物類が入っている場所に蓋をするかのごとく、ビッグなクイックスタートガイドが入っていました。
残る内容物はご覧の通りです。ペンケース上のくぼみは何なのだろう……
ケーブルと電源アダプタだけを写したのがこちら。
写真左上はデバイスと接続するためのUSB Type-Cケーブル、左下のは3-in-2 ケーブル、右側にあるのが電源アダプタと給電用のUSB Type-Cケーブルです。
ここで注目したい点が1つ。Kamvas Pro 19には、GaN(窒化ガリウム)という半導体を使った電源アダプタが採用されています。
窒化ガリウムのおかげでコンパクトになったり発熱が抑えられたりしているほか、高い充電効率により急速充電が可能です。
液タブにバッテリーがないから意味がないように思えますが、実はこの急速充電によって、Kamvas Pro 19を経由してパソコンなどのデバイスまで充電できるようになっています。
外へ持ち歩くことが多いノートパソコンだと、つなぎ直すケーブルが1本減るだけでも十分価値があるのではないでしょうか。
ついでにケーブルの大体の長さも測ってみました。
いずれもまっすぐ伸ばせば180cm超えるかな?というくらいの長さです。足りないようなら延長ケーブルも別途用意しましょう。
3-in-2ケーブルの3側はHDMI・USB Type-A(データ通信用)・USB Type-C(給電用)に分かれています。
給電用のUSB Type-C端子は付属の電源アダプタにつないでコンセントへ挿せばいいので、パソコン側にはHDMIとUSB Type-Aの2つを接続できればOKです。
こちらはペンケース。2つの穴はそれぞれペン立てとして機能します。
裏には芯を抜くための穴があります。
中には2種類のペン(PW600・PW600S)と2種類の芯(標準ペン先・フェルトペン先 各5本)が入っていました。
付属している片手デバイス「Huion Keydial Mini」の外箱です。
こちらの内容物はシンプルで、有線接続・充電用のUSBケーブルと本体、そしてクイックスタートガイドの3つが入っていました。本体はスマホを横に長くしたようなサイズ感でした。
残りは2本指グローブとクリーニングクロスのアクセサリ類。これで内容物は全部です。
ここまで見て、真っ先に興味を持ったのは液タブ本体のサイズでした。
実物を見たからこそ気付けたのですが、ご覧のように16インチの液タブとほとんど変わらないんですよ!
もしかしてと思い、今使っているスタンドに乗せてみると…
これが
こうなりました。
もうドンピシャだったんです。
大型の液タブに憧れてはいたものの、置くスペースが無くて諦めていたのですが、これなら16インチとほぼ同じスペースでより大きい画面へとグレードアップできます。
この事実が分かった途端、目の前の液タブが自分のために生まれてきたのではないかと思うようになりましたね。
一方で、組み立てている中で気になる点も見つかりました。
このようにKamvas Pro 19の差込口にはUSB Type-Cポートが2つありますが、どっちがデータ通信用でどっちが給電用なのかが分かりづらいです。
一度繋いだらそのままの場合がほとんどなので許容範囲内ですが、目印があればわざわざ調べる手間が省けるのにと思います。
私の持っているKamvas Pro 16 (2.5K)はUSB Type-Cポートの隣に表記があっただけに、これは少し残念でした。
またケーブルを接続すると、液タブの横から飛び出す形になるのが気になります。
実用上は何も影響ありませんが、デスクまわりをキレイに見せたい人なら気になるはずです。
それと給電用のケーブルはもっと長くていいと思います。
過去に他の液タブのレビューをした際には「長すぎてゴチャゴチャする」ことを不満点に上げていましたが、私が間違っていました。
ケーブルがごちゃつくよりも好きな場所に配置ができない方が嫌ですよね。
折りたたみスタンドも一応使ってみました。過去に使っていた液タブは、折りたたみスタンドの安定感がなくて期待していなかったのですが、これは普通に良かったです。
足先の滑り止めがちゃんと機能していましたし、ある程度力を入れないと折り畳めないようになっているおかげで、使用中に倒れる心配はありませんでした。
とはいえ角度調整ができないので、別途スタンドやモニターアームなどをを用意した方が良いことには変わりないですけどね。
モニターアームといえば、重さに関して1つ注意しておきたいことがありました。
というのも、Kamvas Pro 19の重さは2kgと、このサイズにしては軽量です。
移動の際にはありがたいのですが、モニターアームに取り付ける場合にはその軽さが仇となって、アームが浮きやすくなってしまうことがあります。
3.2~11.3kgまで対応の「エルゴトロン LX デスク モニターアーム」に取り付けたところ、一応問題なく使えました。
ただ対応重量の範囲外だからか、上方向に軽く力を加えただけで浮き上がってしまうのは気になりましたね。
手持ちまたは購入を検討しているモニターアームが、どの範囲の重量に対応しているかは事前に確認しておいた方がいいです。
ケーブルを繋いでアームに取り付けたら、パソコンにドライバーをインストールします。
インストールするには、公式サイトからのダウンロードが必要です。
インストールに関しては画面のシンプルな指示に従うだけなので非常に簡単でした。
設定ソフトでは、作業領域の割り当てと筆圧設定、ペン設定、ディスプレイ設定などができます。
Kamvas Pro 19の描き心地
レビューできる時間が限られていたので新規絵は描けませんでしたが、過去絵を塗り直してみたり、日課のクロッキーで使ってみたりして描き心地を存分に体験しました。
本製品のペンに採用されている技術はPentech 4.0と呼ばれるもので、私が普段使っているペンはその前のPentech 3.0です。
1世代の違いですが、より紙に近い描き心地に近づいており、分かりやすくグレードアップしていました。
視差もより小さくなりましたし、引きたい場所に線を引け、止めたい場所でちゃんと止まります。ほぼ理想的といっても過言ではないでしょう。
今使っている液タブで不満はなかったのですが、この描き心地を知ってからは物足りなくなってしまいました。
視差は分からないレベルに小さい
中央とコーナーにそれぞれペン先を置いて、カーソルとのズレを見てみました。
ご覧の通り、カーソルの先がペン先にぴったりと重なっています。
中央だけならまだしも、端でも横から覗き込んでようやく分かるほどにズレが小さかったです。
「閉じる」ボタンや「最大化・最小化」ボタンもズレによる押し間違えがなくなり、ストレスを感じることがありませんでした。
傾き検知が大きく改善していた
ペイントソフトのクリスタを起動し、鉛筆ツールを使って色々な描き方をしてみました。
何台か液タブをレビューしてきた経験からの意見ですが、Huionの液タブはPentech 4.0をもって最大手メーカーのワコムと同レベルの傾き表現に達したと言えます。
Pentch3.0のペンは縦方向・横方向に対しての傾き検知は問題なかったものの、斜め方向だと思うように機能していませんでした(画像右)。
それが本製品(画像左)では完全に解消されており、もはや文句のつけようがなくなってしまいました。
同じ方向でも、倒し方によって変化をつけやすくなっている点からも進化を感じます。
今後発売されるPentech 4.0対応の液タブにも期待できそうですね。
筆圧検知も◎
Kamvas Pro 19は脅威の16384(0~16383)段階に対応しています。
ただ、ペン先が変形しないか不安になるくらい力を入れても最大まで届かなかったので、無理してまでフル活用する必要はなさそうです。
設定の際は、ただ自分好みのタッチで描けることに集中しましょう。
しっかりめの摩擦感で紙に近い感覚
フェルト芯と通常芯のどちらを使うかにもよりますが、フェルト芯だと紙に近い感覚になり、しっかりと摩擦感がありました。
他の液タブでペーパーライクフィルムを貼っていたという人も、この製品はまずそのままで使ってみてほしいですね。
フィルムを貼ると厚みで視差が出てしまいますし、貼らずに済むならそれがいいかと。
ほどよい摩擦感で線を引くのが気持ちいいですし、ペンが止めたいところで止まります。
もう少し滑りが欲しいという場合は通常芯を使えばOKです。
スリムペンが使いやすかった
旧型のペン(PW517)と比べると重心が真ん中寄りになっており、中身の密度が上がったように感じました。
重さの違いについては、旧型と持ち比べてみてもよく分からないレベルです。
PW600は標準サイズで、ボタンが1つ多く搭載されており、PW600Sは細身で市販のシャーペンなどに近い形となっています。
両方のペンを使ってみましたが、個人的にはスリムペンが強めに握っても指がズレにくくフィット感があって好みでしたね。
また、テールイレーザーが付いていたので試してみたところ、素直に線を消してくれて反応も良かったです。
ただやっぱり持ち替えるのが面倒なので、私は使わないかな
Kamvas Pro 19のディスプレイ性能
ディスプレイ部分に関しても最上位・最新の製品に恥じない性能をしていました。
家にある機材を使って色域のテストをしてみても記載通りの広色域でしたし、画面のムラも気になりませんでした。
その上sRGB・AdobeRGB・P3それぞれの色域で表示できるカラーモードの設定も用意されていて、実用面に抜かりはありません。
このように発色が大変優秀な液タブなのですが、それでも私にとってはこのサイズでこれだけ大きい画面が使えることが一番の衝撃でしたね。
狭い机に置ける大画面と4Kの快適さに感動
普段16インチQHDを使っている私が19インチ4Kを使って感じたのは、心地よいほどの余裕です。
キャンバスの表示スペースを確保しようと、クリスタのワークスペースを切り詰めてきたのが嘘のようでした。
画面が大きいのと細かい部分も綺麗に表示されるおかげで、キャンバスを拡大・縮小する頻度が減りましたし、画面に顔を近づけてしまうことも減りました。
画面の余裕は心の余裕
一方で19インチで解像度4Kの表示は非常にきめ細かく、表示倍率が100%のままだと文字やアイコンが小さすぎて見づらかったです。
私は125%がちょうどいいように感じました。これでもQHDより明らかに表示できる情報が増えており、キャンバスの表示スペースも余裕を持って確保できています。
液タブ前面の発熱は気にならなかった
レビューで朝から夕食前まで使い続けていましたが、背面からの排熱が上手く働いているおかげで前面が過度に熱くなることはありませんでした。
また、一部が極度に熱くなるということもなく、全体的にほんのり温かいと感じる程度に抑えられています。
冬のカイロ代わりにはならないかも
記載に偽りなしの広色域
自前のキャリブレーションツールを使って本製品の色域を計測してみました。
液タブの設定で各種カラーモード(sRGB・AdobeRGB・DCI-P3)にした場合と、制限なしのNativeにした場合とで測った結果がこちらです。
色域 | 公称値 | 各カラーモード時 | Native設定時 |
---|---|---|---|
sRGB | 99% | 97% (-2%) | 100% (+1%) |
AdobeRGB | 96% | 94% (-2%) | 95% (-1%) |
DCI-P3(P3) | 98% | 97% (-1%) | 99% (+1%) |
計測環境が異なるため1~2%の誤差が出ていますが、記載されていた通りだったと判断して良いでしょう。
Web向けはsRGBさえカバーしていれば十分でしたが、最近のスマホやタブレット・パソコンモニターには、P3(DCI-P3・Display P3)色域をカバーした製品が増えてきました。
本製品はそういったデバイスでの見え方を十分に再現できるという点で、時代に見合った性能を持っていると言えます。
・sRGBモード
・AdobeRGBモード
・DCI-P3モード
・Native設定
カラーモードの設定を完備しているのがグッド
既に上記の計測でカラーモードの切り替えをやっている通り、本製品は設定によって使用する色域を選ぶことができます。
設定画面は2通りあり、そのうちの1つは設定ソフトから可能です。
歯車のアイコンをタップし、「デバイス」タブの中から「ディスプレイ設定」と書かれたボタンをタップすると表示されました。
もう一つは電源ボタンの長押し(約3秒ほど)です。
こちらはペンを使って操作する必要がありますが、わざわざ設定ソフトを開かなくていいので私はこちらが好みでしたね。
設定ではどんな設定内容でも共通して輝度の調整ができます。画面が明るすぎる・暗すぎると感じたらここで調節しましょう。
シーンモードでは「標準」「ゲーム」「映画」「ユーザー」の4種から選べますが、液タブを創作目的で使うならデフォルトのままでOKです。
特定の色域で表示したい時は、色空間の設定タブを選択し、目的のカラーモードを選びましょう。
Nativeを選べばコントラストや彩度も調整できるようになりますが、明確な目的がない限りは使わなくていいと思います。
マルチタッチの精度・反応は良好
個人的に液タブのマルチタッチといえばオフにして使う人が多い印象があるのですが、実際に試してみるとスマホやタブレットと同じ感覚で操作できるのは普通に快適だと思いました。
手のひらを乗せても誤検知されませんでしたし、反応も良かったです。
お絵描き以外の場面でもマウス・ペンに代わる第3の操作方法としてあって損はないと思います。
ただスマホ・タブレットより画面の抵抗が強いため、手がしっとりしてるとスワイプのような操作は思うように指が滑らなくて苦労しました。
私と似たような体質の人はちょっと注意ですね。
マルチタッチのオンオフ切り替えについては、本体上部・電源ボタンの横にあるスイッチでできます。
指の腹だと切り替えが難しいので、爪に引っ掛けて動かすのがコツです。頻繁に切り替える使い方は想定されていないように感じました。
付属している片手デバイスの評価は?
一緒についてくる「Huion Keydial Mini」についてですが、片手デバイスとしての役割は十分に果たせており、ダイヤル内側のボタンでダイヤルの操作を切り替えられるのが便利でした。
デフォルト設定で切り替え可能な「スクロール」・「ブラシサイズ」・「拡大/縮小」は使いやすく、「カチカチ」というフィードバックもあってダイヤル部分は中々良かったと思います。
接続面では有線・無線に両対応しているのが好印象ですし、スマホ以上に軽量で持ち運びやこまめな位置調整がしやすいのもこのデバイスの魅力だと感じました。
その一方で、画面から目を離さず直感的に操作できるか、という操作性の観点でみると改善の余地があるように思います。
特にこのデバイスは同じ形のボタンが何個もあるので、それらを区別するための工夫がもう少し欲しいですね。
例えばボタン表面の突起をもう少し大きくしたり、矢印をボタンにただ印字するのではなくボタンの形自体を矢印にしたり……
また、レビュー期間内ではキーボードで言うところのホームポジションが見つけられず、窮屈さを拭えませんでした。
まとめると、「既にお気に入りを持っている人の一番にはなれないけど、片手デバイスを持ってない人には嬉しい付属品」というのがこのデバイスの評価になります。
片手デバイスについては別途記事にしましたので、詳細なレビューはそちらをご覧ください。
まとめ: 16インチからグレードアップしたい本気の人におすすめ!
今まで10万円未満の液タブでも十分だと考えていましたが、正直言ってここまで差があるとは思っていませんでした。
私自身、今回のレビューを通して次に買い替えたい液タブのイメージが鮮明になり、はからずも活動のモチベーションをもらえました。
15万円前後と価格だけ見れば確かに高いですが、長く付き合える最高の仕事道具がこの価格で手に入るならむしろ安いくらいです。
イラスト・漫画・CGなど、本気で創作に取り組みたい人は、多少無理してでもこのレベルの液タブを検討することをおすすめします。
個人的には大満足で星5としたいところですが、長期間使えていない関係上 未知数な部分があるため、評価は星4.5とさせていただきました。