こんにちは、絵描きの京時ロメ(@kyotoki_OX)です。
コスパの良い製品で定評のあるXP-PENの液タブですが、ついにプロ仕様の大型モデルが登場しました。
発表されたのはArtist Pro 24 (Gen 2) シリーズで、高解像度な4Kモデルと高リフレッシュレートな165Hzモデルの2種類を販売するとのことです。
今回ははこれら2製品について、いち早く特徴やスペックなどの情報をお届けします。

この度はXP-PEN様から情報を提供いただきました。私のところにまでわざわざ案内が来たくらいですから、本気っぷりがうかがえます
近々液タブの買い替え・グレードアップを予定している人は特に要チェックです。
Artist Pro 24 (Gen 2) シリーズの特徴

Artist Pro 24 (Gen 2) シリーズで注目したいのは、ズバリ色です。
sRGB99%、AdobeRGB 99%、Display P3 98%(165Hzモデルは94%)と、グラフィック分野で使われる3つの色域を満遍なくカバーしています。
もちろん各色域ごとに表示モードの切り替えが可能なので実用面に抜かりはありません。
またCalman認証を取得しており、色精度の高さも保証されています。

ツールを使用したカラーキャリブレーションにも対応し、定期的な色校正を行うことで高い精度を長期間維持できます。
つい数年前までの液タブは色表現の正確性がそこまで重要視されていない印象でしたが、最近になって各社がようやく本腰を入れるようになりました。いい傾向だと思います。
そしてもう一つ注目したいのが、165Hzモデルの存在ですね。
リフレッシュレート165Hzはゲーミングモニターでは珍しくないのですが、液タブだと本製品が初となります。
ただ後述するように、165Hzの恩恵を受けられるかどうかは使うソフトの対応状況や個々人の感じ方によるところが大きいです。
もちろんゲーム用にも使えますが、ゲーミングモニターの完全な代わりにはならないので注意しましょう。
競技性の高いゲームだと、リフレッシュレートだけでなく応答速度や入力遅延などもより重要になりますからね。
その他の特徴
・XP-PEN独自の色校正ソフト「XPPen ColorMaster」が使用可能
画面は経年劣化によって色味が少しずつ変わっていくので、定期的なキャリブレーションを行えると好ましいです。
この「XPPen ColorMaster(無料)」と別売りのキャリブレーションセンサーを使えば、画面の色味を正確な状態に校正してくれます。
「XPPen ColorMaster」自体も液タブと同時リリースなので、ソフトウェアの完成度が気になるところです。

ちなみにワコムのプロ向け液タブは以前からカラーキャリブレーションに対応しているので、今回XP-PENが肩を並べた形となります
・筆圧検知レベルは最先端の16384段階
筆圧の変化をより細かく読み取れるようになりました。
とはいえ8192段階でも十分すぎるくらいだったので、実際に使ってみても違いがわからないかもしれません。
・Android(USB3.1,DP1.2以降)にも対応
24インチの大型液タブでありながら、一部のAndroidデバイスとも接続可能です。
プロ向けの液タブを買う人がパソコンを持っていないという状況は考えにくいものの、パソコンが故障した際などの緊急手段として役立ちそうです。
内容物

Artist Pro 24 (Gen 2) シリーズの内容物は以下のとおりです。4Kモデルも165Hzモデルも同じ物が入っています。
内容物 | 個数 |
---|---|
液タブ本体 | 1 |
X3 Pro ペン | 1 |
X3 Pro スリムペン | 1 |
標準芯 | 10 |
スリムペン用標準芯 | 10+4 |
フェルト芯 | 4 |
ペンケース | 1 |
片手デバイス& Bluetoothレシーバー | 1 |
電源アダプター&ケーブル | 1 |
DisplayPortケーブル | 1 |
HDMIケーブル | 1 |
USB-C to Cケーブル | 1 |
USB-C to USB-Aケーブル | 1 |
グローブ | 1 |
クリーニングクロス | 1 |
ペンクリップ | 2 |
ACS02スタンド | 1 |
他社の類似製品とのスペック比較
Artist Pro 24 (Gen 2)シリーズのスペック紹介も兼ねて、他社のフラグシップモデルと比較してみました。
表を全部読めとは言いません。
「4Kモデルが他社の競合製品と肩を並べるレベルであること」「165Hzモデルは4Kモデルより安い可能性があること」が伝われば十分です。
Artist Pro 24 (Gen 2) | Cintiq Pro 27 | Kamvas Pro 27 | |
---|---|---|---|
画面サイズ | 526×296mm | 596×355mm | 596.7×335.7mm |
画面解像度 | 4Kモデル: 3840×2160px 165Hzモデル: 2560×1440px | 3840×2160px | 3840×2160px |
リフレッシュレート | 4Kモデル: 60Hz 165Hzモデル: 165Hz | 120Hz | 60Hz |
応答速度 | 未公表 | 10ms | 14ms |
筆圧検知レベル | 16,384 | 8,192 | 16384 |
傾き検知 | 60° | 60° | 60° |
ペンの反応荷重 | 3g | 未公表 | 2g |
読み取り高さ | 10mm(中央) | 未公表 | 8mm(中央) |
読み取り精度 | ±0.4mm(中央) | 「非常に小さい視差」 | ±0.3mm (中央) ±1mm (角) |
色域 | sRGB: 99% AdobeRGB: 99% Display P3: 98%(4K)/94%(165Hz) ※ | sRGB: 未公表(推定99%) AdobeRGB: 99% DCI-P3: 98% ※ | sRGB: 99% AdobeRGB: 98% DCI-P3: 97% ※ |
カラーキャリブレーション | ・Calman認証取得 ・別売のキャリブレーションツールで定期的な調整が可能 ・ΔE(色差)<1 | ・Pantone認証取得 ・Pantone SkinTone 認証取得 ・別売のキャリブレーションツールで定期的な調整が可能 | ・工場出荷時にハードウェアキャリブレーション済み ・ΔE(色差)<1.5 |
最大表示色 | 4Kモデル: 約10.7億色 165Hzモデル: 約1670万色 | 約10.7億色 | 約10.7億色 |
対応システム | Windows 7以降 macOS 10.13以降 Chrome OS 88以降 Linux Android (USB3.1 DP1.2以降) | Windows 10以降 macOS 10.15以降 | Windows 10以降 macOS 10.12以降 Android 6.0以降 (USB3.1 DP1.2以降) Linux(Ubuntu 20.04 LTS) |
機能・特徴 | ・標準ペンとスリムペンの2種同梱 ・片手デバイス付属 ・角度調整スタンド付属 | ・HDR対応 ・マルチタッチ対応 ・重さや太さなどカスタマイズ可能なペン ・ExpressKey搭載 (グリップ型のショートカットキー) ・スリムベゼル(画面外のフチが細い) | ・マルチタッチ対応 ・標準ペンとスリムペンの2種同梱 ・片手デバイス付属 ・簡易スタンド内蔵 ・スリムベゼル |
4Kモデルにおいては、他社の最高級機と比較しても遜色のない性能を備えています。
特に色精度へのこだわりが顕著に出ており、色域・カラーキャリブレーション・最大表示色の項目ではCintiq Pro 27と互角です。
ただ一方で競合製品も機能面などが強力なため、どれだけ優位に立てるかは価格次第になってくるでしょう。
Cintiq Pro 27が約50~60万円、Kamvas Pro 27が約30万円ですから、24インチの液タブならどんなに高くても20万円台で収まるはずです。
加えて、まともなスタンドが付属しているのがこの3つの中ではArtist Pro 24(Gen 2)シリーズのみなので、その点も込みで考えると、高コスパなプロ向け液タブになれる可能性は十分にあります。
165Hzモデルについては、リフレッシュレートを重視した代わりに4Kモデルよりも解像度や色表現の性能が少し控えめになっていますね。
ただ、その分4Kモデルよりも安くなるのであれば、ちょっと背伸びしたい人にとっての魅力的な候補になりそうです。
(追記)Artist Pro 24(Gen 2)シリーズの価格が判明
Artist Pro 24(Gen 2)シリーズ2機種の価格が明らかになりました。
4Kモデルは199,800円、165Hzは169,800円です。
高くて20万円台と見積もっていましたが、ギリギリ20万円を下回っています。
ゆくゆくはセールにも期待できるので、コスパはもっと良くなりそうです。
※Display P3とDCI-P3についてですが、色域においてはDisplay P3=DCI-P3と捉えていただいて結構です。
リフレッシュレート165Hzにはどんな意味がある?

リフレッシュレート(対応フレームレート・Hz)は、1秒間に画面の表示が更新される回数のことです。
液タブにおいては、引いた線が画面に反映されるまでが早くなり、手書きの見え方に近くなるというメリットがあります。
ちょうど60Hzのモニターと165Hzのゲーミングモニターを持っているので、それぞれのモニターでクリスタやWindows標準のペイントアプリを使ってみました。


動画で見せられたら良かったのですが、165Hzを撮影できるカメラがないので文章で説明しますね
「マウスカーソル」に関しては変化を感じられ、やはり60Hzの画面と比べて動きがスムーズに見えました。
残像感が減るため目で追いやすくなりますし、カーソルが画面の上を滑るという表現も大げさではないくらいです。
ただ残念なことに、ペイントアプリのブラシにおいては描画・ブラシカーソルどちらにも違いがなかったように感じました。
また、キャンバスを動かしてみても、明確な差は見られませんでした。
私が60Hzと165Hzを見分けられていないという疑いもありますが、スマホのリフレッシュレートを60→90Hzに変更した際にはハッキリ違いを実感できたので、その可能性は低いと考えています。
パソコンにはグラフィックボードのRTX3060を搭載しているので、スペック面も問題ないはずです。
となると、アプリ側が60fpsまでしか出せていない可能性に行き着きます。

1秒間に165回画像を表示できる力(165Hz)を持っていても、1秒間に画像が60枚しか送られてこない(60fps)のなら、60枚分だけ表示するしかないですよね
今回試したのはクリスタと標準ペイントアプリの2つでしたが、他のペイントアプリやゲーム開発のようなクリエイティブ用途などで使っていれば、165Hzが生きる場面は自ずと出てくるはずです。
どんな人が検討すべき?
最後に、現在公開されている情報の範囲で、それぞれのモデルがどんな人におすすめなのかをまとめます。
4Kモデル:
現時点で最高の液タブを求める人
色の正確性が求められる仕事・趣味をしている人
競合製品とは文字通り互角の力関係なので、予算や独自の機能、デザイン、保証、メーカーの好みといった観点から比較することになりそうです。
165Hzモデル:
高リフレッシュレートを生かせるソフト・用途がある人
解像度・色精度・サイズなどをコスパよく、まとめてグレードアップしたい人
4Kモデルとの価格差(3万円)を小さいと見るなら、奮発して4Kモデルに行ってもいいと思います。
ただ高リフレッシュレートが4Kモデルにない強みであるように、単純な下位互換ではないということを考えると、価格設定自体は妥当と言っていいでしょう。
今後の価格変動・セール次第で、より多くの人が検討できる予算で買えるようになるかもしれません。
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