こんにちは。趣味イラストとストックイラストをちまちま制作しています、京時ロメです。
昨年から話題になっていたAIイラストを今更ながら試してみたのでその感想と、これからのイラスト制作について考えたことをまとめました。
僕自身はAIイラストに対してどちらかというとネガティブな印象を抱いていましたが、実際に使ってみて脅威を感じたと同時に、中々利用価値が高いのではと思えるようになりました。
目当てのイラストを生成して鑑賞・投稿・販売するような使い方だけでなく、自分でお絵描きしたい人を支援する強力なツールにもなれるかもしれません。
AIイラストを使ってみた感想
まだ数日使った程度ではありますが、ここまでに感じたことを率直に話していきます。
今回筆者は「Stable Diffusion WebUI(AUTOMATIC1111)」というツールを利用してAIイラストの生成を体験してみました。
AIイラストの精度は完璧とまではいかないものの、実用性は十分なレベルだと感じましたし、今後の発展が楽しみだとも思いました。
また使っててハッキリしたのは、自分が今までネガティブに感じていたのが技術そのものではなく、技術を利用する人間の行い・振る舞いにあったということです。
革新的な技術なのに一部の人間のせいで悪いイメージが広まってしまっていると思うと、非常にもったいないと言わざるを得ません。自分自身も使う以上は気をつけたいです。
想像以上に簡単で高クオリティ
まずAIイラストを使ってみて感じたのが、「思っていたよりも簡単だった」ということですね。
プロンプト(生成呪文)を調べる能力、または英語翻訳できる知識・環境があれば、主要な機能はすぐにでも使えます。要は自分でGoogleやらYouTubeやらで検索して調べられる人なら大丈夫ということです。
もちろん不自然な絵もたくさん出てきますが、当たりが出るまで黙々と生成を続ければいいだけの話。プロンプトに「girl」と入れて数値をいじるだけでもこのようなイラストが生成できます。

具体的なアイデアがない場合でも、img2img(画像から画像を生成)を利用すれば、下のように適当な画像からでも女の子の絵を生成できます。

作品制作の補助に使えそう
イラストを生成して遊んでる中で思ったのですが、AIイラストはアイデアを得るのにも良さそうです。
個人的に衣装やアクセサリーのデザインなんかは参考資料として使ってみたいと思いました。
もちろん正確な描写ができるよう、ちゃんとした資料も用意する必要はあります。例えば女性用と男性用とでシャツのボタン付けが異なるのですが、そういった部分までAIが正しく描けている保証はありません。
参考資料としての使い道以外にも、イラストを生成していく中でAIならではの斬新で不思議な衣装が生まれることもあり「これはこれでアリかも…」と良い刺激をもらえます。
また実験的に自分で描いたラフをAIに投げてみたのですが、この場合は顔パーツなどの一部に絞ってAIに生成してもらうと添削のような使い方ができそうでした。実際、AIの生成結果は両目の修正点を見つけるのに役立ちました。


中毒性が高くて時間が溶ける
AIイラストの生成には生活に影響が出かねないような中毒性があります。
どうもAIイラストを生成する作業って、SNSや動画・配信サイトで「何か面白いのないかな~ポチポチ」とタイムラインや一覧を何度も更新する、あの感覚に近い気がしてならないのです。
お目当ての絵が出ても、もっと良い絵が出てくるかもしれないという期待で生成を続けてしまいます。
使い始めの初日~3日目あたりは、途中でとんでもない時間を使っていることに気づくも中々やめられず、就寝がいつもより2時間ほど遅くなってしまいました。
慣れてきた今でもなお、一度使い始めるとやめられない自覚があるので、目的が無い時は触らないようにしています。
万能ではない
学習元の作品に偏りがあるからか、絵柄や構図、髪型などにおいて生成しやすいものとそうでないものの差がハッキリと感じられました。
まだ使い慣れてないというのもあるかもしれませんが、プロンプトで指定したり強調構文を使用しているにも関わらず、似たような立ち絵ばかりが出てきます。
髪型も同様の印象でしたね。指定しないと長髪が多く、指定したらしたでバリエーションが少ないように思いました。
それと鏡の前に立っているキャラ絵を生成させてみましたが、これも苦手なようです。

他にもAIイラストは部分的な修正が難しいようにも感じました。
指などの細かい部分を修正するぐらいならできなくもないのですが、脚の向きや腕の置きどころを変えようとするとその部分だけ別物になってしまいます。
左腕と右腕で世界観・キャラ付けが全く違うような外見になってたり、後ろの背景が不自然になったりしていると、流石に許容できないですね。

ただ調べてみると、棒人間でAIイラストのポーズを指定できる拡張機能があるらしいので、この問題は解決できそうです。
AI「絵師」…?
体験した上で改めて思ったのですが、生成したAIイラストをそのまま、またはちょっとだけ修正したものを投稿して絵師を名乗ることにはやはり違和感を覚えます。
描いて欲しいイラストがどういうものか伝え(プロンプト)、イメージのすり合わせ&手直しを経て完成品を受け取る(生成)という過程は、まさに誰かへイラストを依頼する時のそれと同じではないでしょうか。

誰か(AI)に依頼して描いてもらったイラストを掲げて、「絵師だ」と主張するのって変じゃないですか?
AI術師と名乗っている方々を見かけますが、プロンプトを呪文と呼ぶのが定着してるくらいですし、絵師よりもそちらの方がよっぽど適切です。
一方、AIイラストに著作権や学習の許諾といった問題が無いのが前提として、作品のメイン以外で部分的に使用する程度であれば許容範囲かなとも考えます。
というのも、デジタルイラストでは利用許可された他人の素材作品に用いるのは珍しいことではなく、その他人がAIに置き換わるだけの話だと思うんですよね。
クリスタの3Dデッサン人形をトレースしてポーズを作ったり、複数の写真を使って1つの背景を作成したりするように、AIイラストが絵描きの補助をしたり表現の幅を広げたりといった方向に貢献してくれることを期待しています。
AIイラストを体験するには
NovelAIやMidjourneyなどといったサービスを利用すればAIイラストの体験が可能です。しかしこういったサービスは、無料ユーザーだと1日に生成できる量が制限されていたり、サブスクリプションへの加入が必要だったりと何かしら不便を強いられることとなります。
先程も述べましたが、今回筆者が利用したのはStable Diffusion WebUI(AUTOMATIC1111)といって、自分のPCで処理を行う代わりに無制限・無料でイラストを生成できるツールです。
導入方法については色んな人が解説しているのでそちらを参照していただければと。筆者はこちらの動画を見ながら環境構築しました。
Stable Diffusion WebUI(AUTOMATIC1111)を利用するには、お使いのPCに一定以上のスペックが求められます。
特にグラフィックカード(グラフィックボード・GPU)の性能が重要で、筆者も使っているGeforce RTX 3060 12GB版以上が推奨です。AMDのRadeonというシリーズのグラフィックカードもありますが、こちらは最適化不足により性能が発揮できないことが各所の検証結果に出ているため、AIイラストにはおすすめしません。
参考1:ハイエンドゲーミングPCで「Stable Diffusion」を動かすと凄い! 高解像度画像を数秒で生成
参考2:ガチ勢が解説!画像生成AIローカル勢におすすめのグラボ・選ぶ観点も解説
参考3:【Stable Diffusion】AIイラストにおすすめなグラボをガチで検証【GPU別の生成速度】
AIイラスト向けPCの構成例
※Stable Diffusion WebUI(AUTOMATIC1111)の利用を想定した構成
・G-Tune DG-I5G60

AIイラスト入門として十分な性能。普通のイラスト制作も快適ですし、高解像度でなければほとんどのゲームが不自由なく遊べます。
メーカー | マウスコンピューター |
CPU | インテル® Core™ i5-13400F |
グラフィックカード | Geforce RTX 4060 8GB |
メモリ | 16GB (8GB×2 / デュアルチャネル) |
ストレージ | 1TB (NVMe Gen4×4) |
OS | Windows 11 Home 64ビット |
価格 | 199,800円~ |
・DAIV FX-I9G90

2023年9月現在では最高峰のスペック。AIイラストなら高解像度・大量生成に対応できますし、CG制作・動画編集・ゲーム・VRなどもハイレベルでこなせます。仕事道具に妥協したくない人向けのPCです。
メーカー | マウスコンピューター |
CPU | インテル® Core™ i9-13900KF |
グラフィックカード | Geforce RTX 4090 24GB |
メモリ | 64GB (32GB×2 / デュアルチャネル) |
ストレージ | 2TB (NVMe Gen4×4) |
OS | Windows 11 Home 64ビット |
価格 | 629,800円~ |
絵師の仕事はAIに奪われる?
AIイラストが人間の描いたイラストを淘汰するというよりは、技術のあるライバルが爆発的に増えるようなものだと捉えるべきでしょう。
そもそも以前から技術の高い絵師さんはかなり増えており、AIイラストはこの状況を更にエスカレートさせただけに過ぎません。
例えばSNSのアイコン絵・ヘッダー画像作成のような仕事は、AIでも十分過ぎるクオリティの作品が生成可能なため、仮に仕事が残ったとしても今以上に単価が安くなる可能性が高いです。
これからは技術があるのが前提として、作り手の価値観・世界観が今まで以上に重要になってくると思われます。
それが難しい場合は、イラストに加えてLive2Dなどの技術とセットにすることで他と差別化する戦略が考えられるでしょう。
しかしイラスト依頼サイトを覗いてみると分かるように、そういったクリエイターは現時点でも多く見られます。特にLive2D関連はVTuber需要もあってか競争が激しい印象です。
遅かれ早かれ、強いオリジナリティが求められることには変わりありません。

まさにオタクが強い時代ですね
[2023年9月追記]
今までは「AIに作ってもらえばいい」から仕事が減ると考えていましたが、「そういう絵は見飽きたよ」という理由で仕事がなくなる可能性もあるのだと気付かされました。
量産できるようになった作風は陳腐化し、描いたのがAIであろうと人力であろうと一蹴されてしまいます。学習元となったアーティストは間違いなく被害を受けるでしょう。
まだ私の中で考えが固まっていないので上手く言語化できませんが、少なくともAIイラストの現状が良いものではないということだけはハッキリしています。
まとめ: これからAIイラストとどう付き合うか
AIイラストの生成において自分の存在というのはクリエイターではなく、あくまでも依頼する側の人間でしかないという印象でした。自分で絵を描いた時の達成感や上達の喜びは得られないですね。
その一方で、アイデア源の1つにしたり素材として使ったりといった、便利ツールとしての可能性を見いだせました。どんな絵が生成されるか分からないというガチャ要素も(ある意味危険だけど)面白いと思いましたし。
筆者はこれからも自分でイラストを描いていくつもりですが、同時にAIイラストを活用する道も模索していきたいと考えています。別に片方に固執する必要はないですからね。

例えば某お菓子だってそう。きのこもたけのこも両方食べればいいじゃないですか。
まぁ僕はたけのこの方が好きですけどね
自分で触ったからこそ気付ける発見もあるはずなので、AIイラストに肯定的でも否定的でも、絵描きの方でもそうでない方でも、一度体験してみることをおすすめします。